
京都を拠点に自然再生に取り組む会社が開発したのは、まさかの缶カレー!?
メーカーインタビュー
株式会社アドプランツコーポレーション 増永 滋生様
防災やキャンプなどに最適、かつ「京都缶*環づめプロジェクト」の一環として
「1缶のご購入につき50円」が、京都西山山麓の環境保全活動に当てられる「京たけのこカレー」。
開発を手掛ける株式会社アドプランツコーポレーションさんは、実は農家でも
食品メーカーでもなく、自然環境を調査・保全するコンサルタントなのです。
今回は、コンサル会社でありながらなぜ食品開発に踏み出したのか、
その背景にどんな思いがあるのかを深堀りするため、株式会社アドプランツコーポレーションの増永社長にお話をお伺いしました。
意外にも泥臭い、汗と涙の環境コンサルタントの世界
―アドプランツコーポレーションさんの取り組みについて教えてください。
私たちはタケノコ農家でも食品会社でもなく、自然環境を調査、保全再生するコンサルタントです。京都西山地域の方々の、
「私らが自慢できるのはタケノコしかないけれど、竹林が荒れてどうしようもない。竹林をきれいにしても手間ばっかりかかるしなぁ」
という声がきっかけでした。
景観や生物多様性の保全と里山の防災的機能を向上させるには、農林業の活性化に力を
入れるべきじゃないかと感じまして、「環づめ」づくりの構想が始まりました。
地域の方々と共に自然を再生し、その副産物を製作・販売することによって保全活動の継続を目指す、循環型社会づくりの取組みです。

―自然環境を調査、保全再生するコンサルタントとは、どんなお仕事なんですか?
主たる業務は、森林再生をしている会社でして、私も森林の生態の方が専門で植物を
調べたりとか、100年後の森の姿とかを提案したりするのが、本来の仕事になります。
森林や河川を再生したり、調査したりしています。
―そうなんですね。調査というのは具体的になにをされているんですか?
例えば10ヘクタールの山の中で、出る植物をすべてリストアップして調べたり、
そこから出た植物から、環境を評価したりしています。
あるいは5年前に測った木の成長力を 見るときに樹種と太さと高さを調べて、
その変化量を計りながら、最終的には、どのような形がいいのかということを提案する、なかなかマニアックですよね(笑)

―増永さんについてもお聞かせください。このお仕事を始めたきっかけは?
もともと出版社にいたときに、たまたま造園とか自然系の担当になったんです。
そこで関わるうちに自分でもできるんじゃないかと…若気の至りってやつですね。
最初は、造園コンサルみたいな事をやっていたんですけど、ただデザインをするよりは植物の生態とかを知りながらデザインがしたい思いが強くなり仕事を変えて、10年間ぐらい修行しました。その後、独立して会社をつくり今に至ります。
―やはりプロになるには10年かかるのですね。
お仕事の中でこれ辛かったなぁっていうものはありましたか?
たくさんあります(笑)
池の中に「オオフサモ」という外来種がありまして、直径20メーターぐらいの池を
そのオオフサモがすべて覆ってしまうぐらいの繁殖力なんです。
それを駆除する方法を検討するために胴長という長靴みたいなものを履いて池に入って、掬い取らなあかん作業を1月の雪の降る中しました。
―まさかの手作業ですか?!
もう、泣きそうでした。
あとは長野県の山奥にある山小屋まで行って、そこから更に進みテントで1泊しなければ
調べられない樹林があるんですけど、山小屋の方が言うには、ひと月前に
4名くらい亡くなってはるような道らしいんですよね。
戻ってこなくて行方不明になってしまったらしいんですけど、そこを行かなどうしても
調べられなくて。テント泊といっても山なので、適当に開けているところでテントを
張ったんですけど、谷を挟んで向こう側の山の川沿いにクマが4頭歩いているんですよ。
死んでもいいかなと思いながらも、もうコッヘルでご飯炊いて食べてました。
もう懐かしいですけど、やけくそになっていました。

―環境保全のコンサルって言うと、ちょっとスタイリッシュな感じなのかなと思っていたんですけど、結構命がけですね。(笑)
はい、ドMの集まりみたいな感じですね。
地域と徹底的に向き合う、初めての6次化商品開発
─お仕事をされるとき、心がけていることはありますか?
地元の方と対話してヒアリングを重ねて本当に求められている作業をやることです。
コンサルとかやってると、口だけばっかりで苦労しないところが農家さんとの
軋轢になりがちなんですが、我々は実際に、ボランティアで自分たちも同じ思いを
しようと手植えで田植えもしましたし、稲刈りもしました。
だから、そういったことからたぶん同じ仲間として認めてもらえたというか、そういう一体感があります。一緒に話し合って協力してやりましょうってことで、しっかりお話できることが、大事なことだと思いますね。

―「京タケノコのカレー」を開発したきっかけも、やはり地元の方の声があったとのことでしたね。
元々私の実家のお婆ちゃんが竹林を多く持っていて、子供の時はその竹林経営を手伝っていたような記憶があり、苦労はなんとなくわかっていました。
今回竹林の保全を手掛けたのは、西山山麓の大原野っていうところと、あと嵐山嵯峨野
という2つの地域なんですけど、大原野は実は私の実家なんですよね。
その関係もあって,嵐山近辺で天龍寺さんなどのお寺さんをまとめている団体と
嵯峨地域農業づくり会という農家さんが集まった団体があるんですけど、私がどちらも事務局長をしてまして。
10年ぐらい前からこちらも手弁当で一緒に山づくり、そして景観づくりということで、いろんなことをお手伝いしているので信頼関係で成り立っていたんです。
その中でずっと竹林問題を感じていたので、京タケノコを使った商品開発やってみましょうかという話になって。6次化商品を作った経験なんて無かったんですけど、思い切ってやってみたのがきっかけです。

―「京都缶*環づめプロジェクト」について教えて下さい。
小倉百人一首って知っていますか?
百人一首のもとになった小倉山っていうのがあります。嵐山の渡月橋挟んで、渡月橋から山側を川の上流を見て左が嵐山、右が小倉山なんです。
その山を10年間かけて、行政も含めて今森林再生してるんですけど、伐採したところに京都で種から4年かけて育てた苗木を植えているんです。その苗木代を環づめプロジェクトの収益(1缶につき50円)で使わせていただくというプロジェクトです。

―京タケノコは希少な食材として有名だと思うのですが、その特徴など教えて下さい。
日本でも関西圏にタケノコ産地が多いっていうのは、土壌の地質によるものだと思います。大阪層群と言って、沖積層という層が竹の生育に非常に良いっていうのが特徴としてあります。味としては、「肉厚でうまみと歯ごたえがある」ことで全国的に有名です。
―タケノコにはどんな品種があるのでしょうか?
竹は真竹、孟宗(もうそう)竹、破竹とかありますね。
孟宗竹はあのずいぶん昔に中国から入ってきた竹なんですけど、一般的にもタケノコって言われているのは孟宗竹ですね。真竹も食べられないことはないんですけど、ちょっと青みがあって、食べると言うよりは工芸で使われる竹ですね。真竹は日本産なのですが、今は孟宗竹に駆逐されているので、今では貴重な存在になっています。
ちなみに京たけのこカレーに使われているのは孟宗竹です。
―開発にはどのくらいの時間がかかりましたか?
結構かかりました。試作も何回も何回も作り直して、1年ぐらいです。
新鮮なタケノコの食感と旨味を活かしたカレーとしてプロのフードプロデューサーと試作を繰り返しながら、4種(レッドカレー、グリーンカレー、キーマカレー、チキンカレー)を作成しました。

最初は、10種ぐらい作ったんですよ。いっぱい作って最後に4種類に落ち着いたんですが、グリーンカレーだけで3回くらいやり直しています。(笑)
あとスープカレーとかも作りましたし、竹ずみを入れたブラックカレーとか…。
―それもそれでどんなものか気になります!
実は、竹墨はレトルトで作ろうかなと思うんです。別のところで欲しいって言われたので、作ったんですけど、コロナの影響で飛んでしまったんですけどね。
―現在販売している4種の味、スタッフ全員で食べ比べたのですが、レッドカレーは想像以上に辛くてかなり本格的ですね。
辛いの好きな方にはいいでしょうけど、苦手な方はちょっと要注意かもしれません!

―どんな方が購入されることが多いんですか?
よく買わはるのは食にこだわりがある方ですね。
もともとはギフト関係、ブライダルとか内祝いとかに載せて欲しいなぁと思ってつくったのですが、まぁ恥ずかしい話まだそんなに売れてないので、これから色々な売り場を模索したいです。
今はコロナで営業は止まっていますが、将来的には美味しいとか思っていただけるBtoCのアッパーミドル的な層に売れるのが理想と思っています。
―増永さん的にはどんな食べ方がおすすめですか?
この間、パン屋さんとコラボしてキーマカレーとかをカレーパン、グリーンカレーはキッシュにして販売しました!京都は、パン屋が日本で1番多いらしいんです。
パンは人気があり、みんな買って行かれましたね。でもパンだけで買って帰って、カレーの方は買ってくれなかったです。(涙)
あと、私が家でやったのは、ホットサンドです。キーマカレーにチーズとレタスを入れて、塩味はパンに入れるとちょっと弱くなるので、塩を追加して食べると美味しかったです!
―ホットサンド、美味しそうですね!!防災用に備蓄でも使えますけど、キャンプ用品等とセットでアウトドア用とか、普段遣いもできそうな感じでNICEですね!
▼京たけのこカレーの商品情報はコチラ
▼1「肉厚でうまみと歯ごたえがある」全国でも有名な京都西山山麓のタケノコを使用 2 プロのフードアドバイザーが監修した本格派カレー。7大アレルゲン不使用。常温で3年間保管可能。 3「里山再生」「防災」「景観保全」を掲げた、環境問題の解決を目指す「京都缶*環づめプロジェクト」
京タケノコカレー
全国的にも有名な京都西山山麓の新鮮なタケノコの食感と旨味を活かした贅沢なカレーです。
タケノコに合うカレーとしてプロのフードプロデューサーと試作を繰り返しながら、4種(レッドカレー、グリーンカレー、キーマカレー、チキンカレー)を作成しました。
7大アレルゲン不使用で、安心安全に食することが出来ます。
人を巻き込む起爆剤として、試行錯誤を続ける

―京都府でバイヤーズキッチンにご出展いただいた際、商談申込みが11件と大変人気でしたが、他にも商品開発はされていますか?
もちろん、これから展開していきたいです!
他に開発している商品としては、合鴨コンフィが6種類あります。
しょうがと山椒と黒酢と柚子と黒コショウと粒マスタードを作りました。まだ、販売してないですけど。Makuakeには出そうかと思っています。お客さんの声が知りたくてイベントにはちょこちょこ試験的に登場させています。
▼合鴨コンフィのMakuekeページはコチラ
―リリースはどれくらいの時期に予定されてるんですか?
実は悩んでいまして、農家さんで合鴨を使った減農薬栽培をされている方と知り合いまして、5月~8月まで放鳥される合鴨を200羽ぐらいうちで買い取ったんですよね。
ただ、ちょっと値段が高くなり、ひと缶で410円ぐらいに設定しているので、BtoBで7掛けとか言われると赤字になってしまうのです。なので、BtoCじゃないと売れないと思うんですけど、ちょっと売り方が見えてなくて、今考え中です。
あと、青竹のパウダーをうどんに練り込んで竹の香りがするうどんを作ってもらったんですが、賛否両論で青臭いっていう声が多くて商品化は悩んでます。なので、竹炭で真っ黒なうどんを作ってもらおうかなって思ってます。あと、缶詰の第3種として4月に入ってからヨシノボリなどの川魚をつかって何かを商品を作ろうと環づめプロジェクトで考えています。
―こんなにたくさん開発されていたのは知りませんでした!商品化の際は是非バイヤーズキッチンでご紹介させていただきたいです。今後たくさん商品も増えていくと思うのですが、増永さん的にこれからの課題みたいなところってあったりしますか?
我々ができることって本当にごく一部のことしかできないんですけど、今回の環づめプロジェクトで期待しているのは、それが起爆剤となって周りに波及して、こんな事やってくれるのであれば、我々は協力するよとか、たけのこ買ってくれたから、我々も竹林きれいにしようかなっていう、広がりが欲しいんです。そこの広がりを、もっと広げなあかんですが、広がらずに止まってるとのが現状の課題ですね。
もっともっといろんな人が介入したり、企業さんとかも協力してくれて、自然環境を守る輪を広げていかなければならないと思っています。

―最後に、今後の展望があれば教えてください。
商品開発をきっかけに本業の森林の再生とかある地域づくりに、もっと力を入れて行きたいです。将来的には、いろんな商品を作るように技術を磨いて、京都だけなく全国の地域課題解決のきっかけとしてのモデルが作れるようになれば、面白い提案につながっていくのかなと、個人的には思っています。
─貴重なお時間いただきまして、ありがとうございました。
【事務局からのコメント】
今回の記事では、商品ではなく、作り手の増永さんにクロースアップさせていただきました。商品開発の裏にたくさんの苦労やドラマがあり、ご紹介させていただくスタッフとしても、気が引き締まる思いです。アドプランツコーポレーションさんの商品リンクから、増永さんに問い合わせや商談申込みが可能なので、バイヤーの皆様は是非チェックしてみてください!
(スタッフ:服部)
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