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【後編】売れる商品の共通点とは? 日本百貨店の名物バイヤー・日暮さんが伝えたい売り手企業へのメッセージ

株式会社日本百貨店・日暮 学 様

「ニッポンの百貨をおもしろく。」というココロザシを胸に、日本全国からこだわりの食品や雑貨をセレクトし、都内を中心に複数の実店舗を構える日本百貨店様。 前回に引き続き、商品仕入の責任者であり、全国を飛び回り“日本のスグレモノ”を日々探している統括バイヤーの「日暮 学(ひぐらし まなぶ)様」に、2020年からのコロナ禍以降の商品のあり方をメインにお話を伺いました。(第1部がまだの方は下記リンクからどうぞ!)[インタビュー日:2023年2月3日(金)]

▼【前編】 “いろいろ”あるからおもしろい! 日本百貨店が貫くこだわりとは

株式会社日本百貨店・日暮 学 様

【前編】 “いろいろ”あるからおもしろい! 日本百貨店が貫くこだわりとは

「ニッポンの百貨をおもしろく。」というココロザシを胸に、日本全国からこだわりの食品や雑貨をセレクトし、都内を中心に複数の実店舗を構える日本百貨店様。 今回は仕入の責任者であり、全国を飛び回り日本の“スグレモノ”を日々探している統括バイヤーの「日暮 学(ひぐらし まなぶ)様」にお話を伺いました。 本記事は2部構成に渡ってお届けします。[インタビュー日:2023年2月3日(金)]

いいモノで生活を豊かに。
コロナ禍でも売れた商品

──コロナの影響で店舗での商品の売れ方に関しては変化がありましたか?

そうですね、お土産品の色が強い商品はかなり落ちましたね。その代わりに“自分へのご褒美”のような「ちょっと値段は高いけど、物がいいモノ・質がいいモノ」が動く傾向にありました。

──“自分へのご褒美”商品というと、例えばどのような商品でしょうか?

ちょっと高めのスイーツは人気ですね。あとは前より自炊する人が多くなったのか、自家需要としての調味料も若干動いているような気がします。“今まではスーパーのナショナルブランドのお醤油を使っていたけれど、ちょっといい木桶の醤油を買ってみようかな”というような方が増えているのかもしれません。

あとは家飲み時間が増えている=お酒自体の消費が増えているため、アテとしてのおつまみ商品もちょっと上がってきていますね。

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おつまみ特集も日本百貨店さんならではのニューな切り口で実施

──今までとは違った商品を手に取られるお客様も増えているのですね。この流れは2023年現在も続いているように感じますか?

そうですね、今も続いているかなと思います。買い物需要として、今は“本当に美味しくて必要なもの”、“素材がいいもの”という商品のニーズが高いように感じますね。


──ちなみに、実際の取引に至る数はどのような状況ですか?

10社商談して1社決まるか決まらないか、くらいでしょうか。既存のメーカーさんの中で商品を増やしていったりPB商品を作らせていただいたり、という流れが最近は多いですね。それも含めて月に4~5商品くらい新商品として取扱が増えている形ですかね。

──そうなんですね。今後の展望や大事にしていることはありますか?

少し業界的な話になってしまうのですが、うちみたいなセレクトショップがとても増えてはきているので、これからは僕らみたいなお店にも、より“コンセプト”や“個性”といった特徴が求められてくると思っています。それがないと多分淘汰されてしまうのではと感じています。

例えば“ヴィーガン専門店”だと1つバチッと決まっているじゃないですか。他の人は来ないけどヴィーガンの人はそこ行けばいい、とか。そういった強力なメッセージのようなブランドコンセプトが、これからは必要になってくるかなとは思っています。今、会社としてもすごく意識しているところではありますね。

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秋葉原に店舗を構える「日本百貨店 しょくひんかん」内のめしともコーナー。47都道府県の個性あふれるごはんのお供を豊富に取り揃えている

キーワードは「ひと手間」!?
自家需要商品の中でも売れているものとは

──先ほどコロナ禍でも売れた商品についてお伺いしましたが、具体的な商品はありますか?

一番売れているのは「いちごミルクの素」ですね。えっ!?ていうくらい売れています。

いちごミルクの味って皆好きだと思うのですが、商品としてのいちごミルクの素ってありそうでなかったんですよね。東京の三軒茶屋にイチゴスイーツ専門店を出している“ICHIBIKO”というメーカーさんの商品なのですが、そちらの人気メニューの商品化なんですよね。ちょっとしたブランド性もあるのと、値段も1,200円で“いいモノ”なんです。“ご褒美・いいモノ思考”という昨今の需要にもマッチしていますね。

──たしかにぴったりですね!

他にも売れている要因があると思っていて、いちごミルクの“素”が商品なので、牛乳で割ったり、炭酸で割ったり、ヨーグルトにかけたりとか、飲むためには何か「ひと手間」が入るんですよ。その「ひと手間」というのがポイントでして、買ったらすぐそのまま飲める商品や簡便レトルトのような商品よりも、食べる前にちょっとした「ひと手間」を加える商品が売れているような気がしています。それは「おうち需要」と結びついているのかもしれないし、家でひと手間を加えることが、1つ“コト体験”のような自分で作った体験になるからウケているのかもしれません。

実際出来上がっているいちごミルクより、いちごミルクの素を買って牛乳で割った方が美味しそうじゃないですか?本物っぽいですよね。なので、その「ひと手間」の重要性はわりと感じますね。クラフトコーラの素とかもめちゃくちゃ売れているのですが、それも少しアレンジがきくというか、自分好みにできるんですよね。濃さとか炭酸の量とか、炭酸で割らなくても飲めますしチャイとかにもできますし。

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いちごを摘む日暮さん。実際に日暮さんが現地の農園に足を運びコラボ商品を製造することも!

──飲み物以外で売れている商品はありますか?

そうですね、飲み物以外ですと、ちょっと前の冬に売れたのが「サムゲタンのキット」。それもめちゃくちゃ売れました!

サムゲタンって1から作るのは面倒くさいじゃないですか。僕もなかなか作ろうとは思わないですし、材料をそろえて買うくらいなら、値段的にも時間的にも食べに行ったほうがいい(笑)

だけどこのキットにはナツメとか玄米とか雑穀とかスパイスとか……そういうのは全部入っていて、あとはスーパーで手羽元だけ買って30分から1時間程度煮込めばOK!簡単にサムゲタンができますよ、というキットなんです。

それがすごく売れたのって、先程の話に通じますが、開けて湯煎するだけとかチンするだけではない絶妙なラインで「ひと手間」を加えて自分で作っているところがちょうど良いのかなと。日本百貨店ではよく売れた人気商品でしたね。

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──「自家需要」や「ひと手間」がキーワードになっているんですね。

あとは「コンセプトがある商品」も強いかな。信濃屋さんや大野屋さん、自然食品のお店のF&Fさん、こしき屋さんという同業である小売店5社で活動している「みんなの食プロジェクト」というプロジェクトがあるんですけど、そのプロジェクトでは“木桶”をコンセプトに『サバの缶詰』を作っているんです。使っている醤油やお酢、味噌などの調味料はすべて木桶で作られたもので、「木桶でつくると何故おいしいのか?」「木桶文化」といったことは店頭のPOP等でストーリーとしても伝えさせていただいています。これも人気のある商品ですね。

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第1弾「木桶醤油&酢のSABA缶」(左)と、第2弾の「木桶仕込み八丁味噌SABA缶」(右)

──今探している商品や、次はこれが来るのでは?と思っている商品はありますか?

うーーん……売れる商品が欲しい(笑) ……というのが前提で「特徴がある商品」を基本的には探していますね。もちろん美味しさも前提として欲しいのですが、他にはない商品、面白さ・切り口が新しい商品といった、「個性がある商品」がいいですね。東京ではあまり見ないとか、都会的ではなくてもいいので面白さがある商品を常に探していますね。

──地場では有名だけど、まだ東京ではなかなか知られてない、みたいな商品でしょうか?

パッと思い浮かばないのですが、地方に行くと“それ、そんな食べ方するの!?”っていう食べ物がたまにあったりするじゃないですか。お雑煮とかでも全然違いますよね。僕は関東の人間なので、京都だとお雑煮には白味噌を使用する、とかそういったものは面白いなと感じます。商品というよりは、なんか地方性があるというのかな。そんなところを僕としては面白いと思ってひとつの切り口として商品を探していければ良いなと思っています。

──商品のトレンドから探したりもされますか?

あまりしないですね。逆に“トレンドに左右されない商品”を多く探しているかもしれません。もともと日本百貨店が『日本のモノづくり』に注目してはじまった会社なので、その商品がどのように作られたかという“ストーリー”や“想い”に共感できるかという方を見ることが多いです。トレンドももちろん考慮はしますが、そこは自分たちの切り口である“編集”の部分やイベントで補う形にして、本来の商品の良さを引き出していきたいなと思っています。

──大変参考になります!

地域産品はトレンドではなく“個性”を大切にしてほしい。

──商談時に「日本百貨店」もしくはバイヤーである日暮さんが考えている商品の“見極めポイント”はありますか?

まずは「こだわり」。“この商品の一番のこだわりポイント”や“どうこだわっているのか”、“それはどこが他社さんと違うのか”、“どういった思いを持っているか”など、そういった部分はまず聞きますね。よく突っ込んで聞いています。なんとなく美味しい、とかだと取扱を決めるには少し弱いので。“これなら他社さんには負けない”といったポイントをよく聞いて、引き出すのが商談の仕事かなと思っています。

仕入れの基準としてよく使う表現としては「人に語りたくなるかどうか」。誰かに伝えたくなるような商品の推しポイント・強みを持っているかは、見極めポイントかもしれません。

──「人に語りたくなるかどうか」。とても大事なポイントですね。前の質問と重複する部分もあると思いますが、商談の際にメーカーさんに何を一番伝えてほしいですか?

やはり「こだわり」ですね。“この商品で1番ここを推したいんです”とか“こういう思いで作っています“とか、“ここは他社さんには負けません”とか。究極そこだけですね。なんでもいいと思うんですよ。その種類は問わないので、そこが何かというのを知りたいですね。極端に言ってしまえば、味だけではなくて、自分自身のキャラクターとかでもいいですよ。自分はこんな人です!みたいな(笑)

──一緒に商品売っていけるような生産者さんとお付き合いしていきたいということでしょうか。

もちろんそうですね。思い出しました必要な条件「人が良い」って言う(笑)絶対必要ですね。

モノだけのお付き合いではないので、やっぱりその作り手さんと一緒に僕たちもしっかり売っていきたいですし、作り手さんにも参加して欲しいなって思いがあるので、一緒に進んで行ける人かな?とか、そういう部分は見ますね。

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──日暮さん個人としては、今後はどのようなにお仕事をしていきたいですか?

今までとあまり変わらないかもしれないですけど、全国にたくさんいる“しっかりモノを作っているんだけど、なかなか売れない”とか、“その伝え方に苦労している”とか、そういった埋もれている商品・生産者さんたちのモノを、切り口を我々で作ってあげたりとか、発掘してあげたりとか、そういったことはしてあげたいなと思っています。

何か‟してあげたい”というと、上からみたいな感じで語弊があるのですが、“売ってあげたいなあ”っていう商品がまだ各地にあるので、そういったものを見つけて、売っていけたらいいなと思っています。

──最後に売り手の皆さんに伝えたいメッセージをお願いいたします!

変に型にはまらないでほしいなと思っています。先ほどもちょっと話が出ましたが、この業界では“トレンド”とかあったりするじゃないですか。1つ流行るとみんな同じような商品が出てくることがあると思うのですが、みんながそれをしてしまうと同じような商品が全国で出来てしまったりするんですよね。特にそのような商品を作る事業者さんって、真面目な方がとにかく多くて。多分『こうやって、こういう風に作りなさい』みたいな指導が入っていると思うんですよ。

なので、言われたとおりに作ってみるけど、そうするとみんな横並びのような商品が全国的に出ていることをよく見るので、それだったらいっそ、もともと持っている個性みたいなものを大事にしてほしいなあと思います。さっきのお雑煮の話じゃないですけど、『東京に持って行くので醤油ベースにしました』って言ったら、“それはちょっと違うんじゃない?”ってなると思うんですよね。なので、そういった“個性”は大事にしていってほしいと考えています。僕たち日本百貨店はそんな商品を求めています。

──貴重なお話をありがとうございました。


【事務局からのコメント】

“ニッポンのスグレモノを広める”という熱い想いを持った日暮さん。売れる商品の見極め方や商談時に重視しているポイントなど貴重なお話をたくさんしていただきました。

バイヤーズキッチンでは、日本百貨店様が掲げるコンセプト「ニッポンのモノヅクリとスグレモノ」と同様、今後も皆様のこだわりの商品を広めるお手伝いをしてまいります。



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