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【前編】 “いろいろ”あるからおもしろい! 日本百貨店が貫くこだわりとは

目利きの視点

【前編】 “いろいろ”あるからおもしろい! 日本百貨店が貫くこだわりとは

株式会社日本百貨店・日暮 学 様
「ニッポンの百貨をおもしろく。」というココロザシを胸に、日本全国からこだわりの食品や雑貨をセレクトし、都内を中心に複数の実店舗を構える日本百貨店様。 今回は仕入の責任者であり、全国を飛び回り日本の“スグレモノ”を日々探している統括バイヤーの「日暮 学(ひぐらし まなぶ)様」にお話を伺いました。 本記事は2部構成に渡ってお届けします。[インタビュー日:2023年2月3日(金)]



“日本のモノづくりにお金をまわす”
創業10年目の節目で見えてきたもの



─まず、日本百貨店様についてお聞かせください。2020年に創業10年目を迎えられ、あわせてリブランディングを行われたんですね。

2010年に創業した、日本全国からこだわりの食品や雑貨をセレクトしたお店です。日本百貨店のコンセプトというか、根幹・存在意義というところになるかと思うのですが、「日本のものづくりにお金を回す」という想いで元々お店を立ち上げています。今でもそのコンセプトは変わらずに運営をしていますが、ちょうど創業して10年経ち一区切りということで、リブランディングはタイミング的にもいいかなと……。
元々うちが創業した2010年に比べると、今は似たようなセレクトショップが多くなってきたじゃないですか。当時はうちみたいなお店はなくて新しかったので、それだけで差別化できていたというか。一つ「日本百貨店」っていうのがブランドとして確立されていたんです。
ですが、この10年で結構時代も変わり、今や日本のいいものとかメイドインジャパンの商品を扱うお店が結構増えてきていているように思えていて。

─たしかに、そうかもしれないですね。

なので、同じようなお店や同じようなコンセプトのところが、商品も同じようなのを扱っているというのを感じて、やっぱり僕たちの中でも差別化というか、ちゃんとブランディングをしないといけないなあと思い、リブランディングを実施しました。
よく僕らも生産者さんに「差別化」が大切とお伝えしますが、僕らにもそれは当てはまっていることなので。ここ何年かお客様に対して日本百貨店がどういう店なのかが、いまいち伝わってなかったんですよね。

─同じようなお店が増えると消費者の方からしてもどんな違いがあるか分かりにくいですもんね。

そうなんですよ。なので、それが一番のきっかけですかね。お客様とのコミュニケーションというか“僕たちはこういうこと!こういう思いでやっている!”っていうのがお客様に伝わってないなという感覚はずっとありました。
なんとなく“日本のいいものを扱っているお店だよね”っていうので、一括りにされていたりとか、 “なんかメイドインジャパンのものを扱っているんじゃない?”とか、“なんかの物産展や物産館でしょう”とか……人によってイメージがばらばらだったのかな、と。
なので、認知度というか「ブランドイメージを確立」させることが必要だと思ったことが本当のきっかけです。他社さんはその部分が結構上手くて。だから競合と比べて僕らもしっかり確立しないといけないなということになりました。

─そうだったんですね。色々と考えられながらリブランディングを行われたのですね。

そうですね。期間も半年以上かけてやりましたね。
創業時からの日本百貨店を知る旧いメンバーと、現社長と、外部の方やブランディングのプロも入れて、「日本百貨店と何か?」みたいなことをずっと話し合ってきました。キーワードを書き出しては貼って…“日本百貨店とは?”っていうのをどんどん突き詰める作業をずっとやっていました。
その作業を重ねると、今まで僕たちがやってきた日本百貨店をうまく言語化するっていうところがどうしても足りていなかったということが、だんだんと見えてきて。
“僕たちはこういう商品入れて、こういう面白いことをやっている”ということが、お客様には多分うまく伝わっていない状態だったため、なにか新しいテーマや新しいことをするということより、“今まで僕たちがやってきたことをシンプルに整理していこう”という点に重きをおいてリブランディングを進めていました。



─リブランディングを進める中で、“日本百貨店とは何か”というのは見つかりましたか? 

はい。冒頭にお話した創業時のコンセプトである“日本のモノづくりに、お金を回す”っていう一番の根幹の部分は全く変わっていないんですね。それと同じく、“日本のその優れもの、各地の優れ物を発信していく”っていうことも変わっていないです。その上で、他社さんと比較して見てみた時に、日本百貨店は「いろいろ商品があるよね」っていう話になって。

「いろいろ」というのは、他社さんに比べると、“いろんなカテゴリー”だったり、“いろんな切り口”で商品を置いていたり、日常品だけではなくギフトも取り扱っていたり、地方性が豊かなものだけかと思ったら、凄い最先端のものが置いてあったりとか。

そんな形で“なんか色々あるね”っていうことから、その「いろいろ」っていうのをキーワードに、「日本の百貨を面白く」というコンセプトに決めました。

─素敵ですね。「いろいろなものがある」というお店の特徴が活きていますね。

そうですね。「百貨」という言葉を実際に広辞苑で引いてみると「色々なもの」という意味があります。もともと、日本の歴史にも、八百万の神とかあるじゃないですか。万物にいろんな神が宿るみたいな。それも一つこう結び付けられると思っていて。

僕たちが扱う「百貨」は、新しいものだけではなくて、古いもの、高価なもの、安いもの、洗練されているもの、垢抜けてないようなもの、日常的なもの、非日常的なもの……など全部を含めて「百貨」であって、“それら全部がいいものだよね”、ということをあえて打ち出すことがコンセプトになっています。

─たしかに日本百貨店様では、多種多様な商品が取り揃えられていますよね。ロゴもリニューアルされていましたよね!

はい、実はこの温泉みたいなロゴも「いろいろ」って書いてあるんですよ!

今までのものはどちらかというと細くて綺麗めなロゴだったんですけど、新しいコンセプトと自分たちがやってきたことを含めると、少しイメージが合っていない気がしたので変更することになりました。“ちょっとユニークなロゴにしましょう”という話からオリジナルの書体も作っていただいたんです。

─いろいろ扱われている日本百貨店さんらしいロゴで、とっても素敵です!



デザインも切り口も打ち出し方も、
“いろいろ”あるのが面白い

──リブランディング後、店舗やWebサイトのイメージも変わりましたね。

はい。2021年12月に店舗のビジュアルイメージも全部変更し、ロゴ、サイン、POP関係も変わってきています。

──リブランディングされてから2年ほど経過されましたが、社内外での変化はありましたか?

そうですね。どちらも変化はありましたね。
社内的にはちょうどリブランディングした時期は新旧メンバーが混在している中で、“日本百貨店って一言で言ったらなんだろう”っていうのがなかなかみんな言えない状況で。リブランディングしたことによって、皆で明文化された一つの共通認識を持てたので、進んでいく方向が見えやすくなった気がします。
でも、どちらかというと社外での変化の方が結構大きくて、特にWebサイトの反響が大きかったです。リブランディングをきっかけに、「ニッポンの百貨をおもしろく。」というコンセプトに沿ってデザインを含めて色々と刷新したのですが、サイトを見た事業者さんや自治体さんからの出店依頼がすごく増えました。

──リブランディングの効果がきちんと出ているんですね。たしかにWebサイトを拝見すると、商品の見せ方も統一感がありますね。

そうですね。コンセプトを表現するための工夫のひとつとして、写真もビビットな感じに統一しています。全体としては、「面白さ」、「ユニークさ」を大事にしています。

──たしかに、ぴったりですね!こちらのデザインでPB(プライベートブランド)商品も作られていますよね。

はい。まずPB商品をどうパッケージで表現していくかという話になったときに、“日本百貨店の”出汁とか、“日本百貨店の”ジャムとか“日本百貨店の○○”のようなものはよくあるような感じでつまらないよね、という話になったんです。
そこで僕らの商品では、作り手を前面に出すような、“PBだけど、生産者さん・メーカーさんの名前をパッケージの表面に出す”点を譲れないポイントにして取り組むことに決めたんです。
デザインに関しては、日本らしさを表現するためにかるたをモチーフにしたデザインになっています。「かるた」って日本文化的だし、ユニークじゃないですか。世の中には、いろいろな切り口、いろんなデザイン、いろんな時代に出来たいろいろなかるたがありますよね?それが今の僕らのコンセプトとぴったりだよね、とデザインのモチーフとなりました。



──日本百貨店さんのこだわりを感じますね!

ありがとうございます。リブランディング前までは地方のものを“そのまま”売るということが多かったんです。でも、“こういう風に日本百貨店の切り口で販売したらよりよく売れるようになるんじゃないかな?”と、我々が編集して発信することをすごく意識するようになりました。

最近はPB商品も増えてきていて、商品の割合も2020年には全体の1~2%だったのに対して、現在は20%くらいまでに増えました。商品数としては200~300商品はあると思います。

──すごい!そんなに増えているんですね。

そうなんです。量目やパッケージなど一つ一つメーカーさんと直接やりとりをして、一緒に作らせていただいています。期間的には半年以上はかけて作るのが一般的だと思うんですけど、2~3か月の短期間で作ってしまうこともありますね。でもそれだとやはりちょっとしんどいので……もう少し余裕をもって作っていきたいなとは思っています。



かるたデザインのものだけではなく、最近だと“イロイロ洋菓子店”という地方のお菓子屋さんの商品を取り上げたPB商品の展開も始めました。地元密着で作っているような地方のお菓子屋さんって、味もすごくおいしいし素材も良い商品を作っているところが多いんですけど、なんだかそのまま売るにはちょっとパッケージが惜しいな、なんて思う商品が結構多くて。そのまま仕入れて販売しても売れにくいなら、新しく“レトロなお菓子屋さん”のようなブランドを作って良さを吸い上げられたらと思い始めてみました。

─本当に色々な切り口で、日本百貨店さんのスパイスが足された商品が増えてきているんですね。

そうですね、PB商品の考え方は大きく方向転換したことの一つです。
ほかにもメーカーさんと一緒に作ったり、信濃屋さん、大野屋さん、F&Fさんといった同業の小売店の人たちとも一緒に商品を作ったりとかしていますね。


──競合でもある小売店さんとコラボレーションはすごいですね。

良い商品に出会えるきっかけですし、すごく面白い取り組みでもあるので、コラボレーションはみんなで積極的に行っていきたいと考えています。今後は、 “日本のスグレモノ”をただ売るだけではなく、打ち出しの仕方でも今までやってなかったようなことや面白い切り口でも広めていきたいですね。



──日本百貨店さんは店舗でもいつも面白いフェアを企画されていますね。

店舗が一番お客様のニーズが見えるので、フェアイベントのテーマや伝え方も面白くしていく必要があると思い、「この題材でどう“面白く”展開できるか?」について、各店舗の店長全員とイベント企画の人間とで毎回考えて取り組んでいます。
フェアは基本的にはシーズンに合わせてテーマを決めていくことが多くて、例えば今だと生姜・ゆず・スパイス・ルームソックスといった体が温まるものを集めた『I LOVE 温活フェア』。去年も『すぼら温活』という名前でまたちょっと違う切り口ではありますが同じテーマで開催したりもしていました。あとは毎年人気で反響が大きいのは“いちごフェア”。平成レトロ感のあるフェアのイラストイメージもかわいいと人気です!

──最近よく、駅構内等でも催事を開催されているのをお見掛けします。

そうですね、催事は今力を入れている分野の一つです。今、戦略的に直営店舗の数を絞っていて、店舗数としては日本橋本店・東京駅構内・秋葉原・町田・大宮・横浜赤レンガの6店舗。どちらかというと直営店はコンセプトといった“ショップブランディングを体現するような場所”、催事はどんどん出店して“たくさんの人に知ってもらうための場所”という位置づけで進めています。



あとはサービスエリアなどへの卸事業もしていますが、昨年末からは関西圏を中心に展開しているドラッグストアのキリン堂さんの店舗の中に「日本百貨店マルシェ」という日本百貨店の世界観を再現した常設ブースを順次オープンしていて、今年10店舗に増える予定です。

──ドラッグストア内にコーナーを作るというのは面白い取り組みですね!

そうですよね、僕も初めて聞いたときびっくりしました(笑)ウチで取り扱っている商品群は、ドラッグストアの価格帯とは全く異なるので大丈夫かな?と思うところもありましたが、好評に進んでいるようです。日本百貨店の取り組みとともに新たなお客様に商品の良さや美味しさが伝わるといいなと思っています。

こだわりを聞く商談。
“いろいろ”あるのが面白い

──現在日本百貨店さんの統括バイヤーとして活躍されている日暮さんですが、1日の業務内容について教えていただけますか?

バイヤーの仕事はルーティーンのことがあまりないので明確なスケジュールは決まっていないです。出張などが入っていない時は、基本的には午前中メールチェックして社内会議、午後にはバイイングや商品開発mtg、たまに店舗のMDや店長との打ち合わせのために店舗を回ったりしています。
出張がある日はずっと外に出ていますね。最近はまた出張も増えてきて今年の1月だけでも北海道・福岡・香川の小豆島と、色々行きましたね。

──飛び回っていますね!商談はどのくらいされていますか?

年間何百件とはしていると思います。オンラインでの商談は最近少なくなってきて、対面での商談が戻ってきたかもしれません。出張で現地に視察に行かせていただいた際に合わせて商談をすることもあります。直接お会いしてお話しすると、人柄などもより感じ取れるので、対面でお話ができる機会はありがたいですね。



─日本百貨店さんのマーチャンダイジングの特徴はありますか?

店舗ごとに取り扱う商品を変えている商品を変えているところでしょうか。売れる商品もお客様の層も異なるので結構違ったりしますね。一般的なチェーン店ですと同じ商品で多店舗展開して、同じマーチャンダイジングをやっていくのですが、弊社は店舗の特性を見て変えているので、取り扱う商品数が多くなってしまうところはちょっと大変だったりします(笑)

──たしかに店舗ごとに異なると大変ですよね。どのような体制で行われているのですか?

全店で実施するフェアや商品については本社チームで計画しますが、その他は基本的に店長が自店のニーズを反映して考えています。それに合わせバイヤー陣が商品提案する形ですね。

──日暮さんだけではなく、他の方の意見もふまえながらいろいろな商品が集まってきているんですね。商品選定で注目して見ている部分はございますか?

やっぱり「こだわり」とか「その商品に対する想い」とか、そういったところがしっかりした商品をベースに選んではいます。それはもうカテゴリー関係なく全ての商品において、こだわりを感じるような商品ですね。
その条件がベースで、店舗によって少し客層が違いますので、切り口を変えるといいますか。『ここはお菓子が人気なのでお菓子を多めに』とか、『ここはちょっと年配のお客様が多いので、ちょっと惣菜も入れとこうか』みたいな。そういう視点で選んでいますね。
売る人も買う人も支援する人も
うれしくなるイベントを

──日本百貨店さんといえば店舗でにぎやかなイベントを数多く開催されていますが、どういった理由から開催されていますか?

大きく分けると2つでしょうか。1つは、何かしらイベントを実施すると、その期間限定でいろんな事業者さんや地域のものが集まりますので、お店が活性化する点です。商品がいろいろあると、お客様も喜んでくれますね。
もう1つは、一つの地域の小規模な生産者さんや事業者さんたちのテストマーケティングの意味合いです。
僕たちは地方自治体さんや商工会議所さんとイベントをよく実施するのですが、自治体さんが管轄している事業者さんの商品を、都内で実際に売れるかどうか2週間ぐらい試してみましょう、というような形でよくやるんですよ。そうすると“売れる・売れない”という結果が出てくるので、ここで得た課題を持ち帰り商品づくりに活かしてくようなコンサルティングのような取り組みも行っています。

──なるほど。お客様にも嬉しく、また生産者さんや自治体の方にも嬉しい取り組みが数々のイベントにつながっているのですね。

そうですね。特にテストマーケティングは、事業者さんの役に立つ取り組みだと思っていて。なんだかんだ、やっぱり一度売ってみることが一番分かるのではないかと思っています。私たちも“コンサルタント”という立場でアドバイスをするために、地方自治体さんの業務をお手伝いするのですが、必ずこうした実店舗でのイベントと連動させてご提案しています。



──実際に購入いただいたお客様からフィードバックいただければすごく嬉しいですよね。

やはりお客様からの声は説得力が出ますよね。いくら口頭で僕たちが事業者さんや自治体さんに対して、たくさん“売れる・売れない”とお伝えしても、なかなか分からないというかリアリティがないように思われがちですよね。その辺りは確かに一番お客様の声がリアルだと思います。

──実データとしてフィードバックできるのは強いですね。ちなみに、イベント商品が常設の取扱になったことはありますか?どんな商品は人気が出やすいのでしょうか?

あります、あります!評判が良い商品、売上が良い商品という条件にはなりますが、もちろんあります!
食品で言うと、よく売れるのは、地域性がある商品や、そのもの自体が面白い商品といった特徴がある商品は売れますね。“その地域ではすごく人気があるけど、東京にはまだ進出していない”とか、“東京の人は知らない”という商品もお客様には人気です。

──こだわりが感じられる特徴がある商品はやはり人気なんですね!

 

【事務局からのコメント】

日本百貨店様の創業時から今に至るこだわりや想い。
「日本の百貨を面白く」お客様に伝えるために、“いろいろ”な切り口で生産者さんなどつくり手の想いや良さを引き出す日本百貨店様のお話は、我々も参考になることばかりでした。
つづく第2部では「コロナ禍で売れる商品の共通点とは?」という、売り手の皆さん必見のお話をお伺いしています。掲載をお楽しみに!

▼【後編】売れる商品の共通点とは? 日本百貨店の名物バイヤー・日暮さんが伝えたい売り手企業へのメッセージ



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