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インバウンド需要の回復により、食品メーカーにとって『外国人観光客に選ばれるお土産食品』を開発する重要性が高まっています。訪日旅行で日本食を楽しむだけでなく、帰国後に家族や友人へ渡せる食品・菓子・調味料・飲料を探す旅行者も少なくありません。地域性のある食品を、持ち帰りやすく、説明しやすく、安心して購入できる形に整えることで、地方メーカーにも新しい販路拡大の機会が生まれます。
地域の素材や食文化を活かしたお土産食品は、観光地・駅・空港・ホテル売店・ECなど、さまざまな売り場と相性があります。一方で、外国人観光客に選ばれるには「おいしい」「地域らしい」だけでなく、持ち帰りやすさ、表示のわかりやすさ、食文化への配慮、売り場での伝わりやすさまで設計する必要があります。
本記事では、インバウンド向けお土産食品を開発する際に押さえたいポイントを、商品設計、パッケージ、多言語表示、食文化への配慮、バイヤー提案の観点から解説します。
日本を訪れる外国人観光客の関心の中心は「食」にあります。日本政府観光局が2024年に実施した調査によると、外国人が「訪日旅行前に期待していたこと」の1位は「日本食を食べること」でした。これはショッピングや観光を上回り、82.2%と非常に高い割合を示しています。
外国人観光客にとって、お土産食品は「日本での体験を持ち帰る商品」です。単に味がよいだけではなく、その地域で作られている理由、素材の背景、食べ方、パッケージのわかりやすさが購入判断に影響します。外国人観光客を引きつける食とは、「その地域でしか味わえないグルメ」です。
寿司やラーメンなどの有名な日本食は世界各地に広まっていますが、地方グルメの多くはまだ日本でしか食べられません。日本の「ここにしかない」という限定感を強く打ち出せば、外国人観光客が注目するグルメになるでしょう。
特に地方食品は、都市部では出会えない限定感やストーリーを打ち出しやすい点が強みです。地域の素材、伝統製法、観光地とのつながりを商品に反映できれば、外国人観光客にとって「日本らしさ」「地域らしさ」が伝わるお土産になります。
参考:JNTO「日本の観光統計データ」
インバウンド向けの商品開発では、外国人観光客に選ばれるための視点や工夫が求められます。ここでは、商品設計、持ち帰りやすさ、地域らしさ、人気ジャンルの観点から、食品メーカーが確認したいポイントを整理します。
インバウンド向けのお土産食品では、次の条件を満たしているかを確認しましょう。
外国人観光客が食品をお土産として購入する場所は、駅、空港、観光地、宿泊施設の売店などが中心です。旅行中に持ち歩くことを考えると、サイズが小さく軽量で、常温保存できる商品は選ばれやすくなります。日本酒などの液体類も、少容量タイプやギフト向けパッケージにすることで、持ち帰りやすさを高められます。
また、日本らしさが感じられる商品は、外国人観光客の興味を引きやすい傾向があります。浮世絵、和柄、筆文字、伝統工芸、地域の風景などをパッケージに取り入れると、売り場で目に留まりやすくなります。ただし、見た目の日本らしさだけでなく、中身や食べ方が伝わることも重要です。
実際に日本酒メーカーの月桂冠では、インバウンド向けに180mlの少容量タイプの日本酒を販売しています。180mlは日本酒でいう1合、カップ酒と同程度の容量です。
容器のラベルデザインは江戸切子をモチーフにしており、見た目にも工夫がされています。容器のふたがお猪口として使える仕様で、持ち運びやすく、気軽に日本酒を楽しめると外国人観光客にも好評です。
ただし、インバウンド向けの商品開発においては、日本から海外に持ち出せない食品があることに注意しましょう。多くの国では、肉や肉加工品、生の野菜や果物、卵、乳製品などの持ち込みが禁止されています。そのため、「購入したおみやげが現地に持ち帰れるか」という視点を持ち、素材や加工方法を十分に検討する必要があります。
参考:月桂冠株式会社「おちょこ付大吟醸」
お土産食品として展開しやすいのは、菓子、茶、調味料、乾物、レトルト食品、常温惣菜、酒類、地域素材を使った加工食品などです。既存の商品をそのまま販売するのではなく、少量パック、個包装、ギフト対応、英語表記、食べ方説明を加えることで、外国人観光客にとって手に取りやすい商品になります。
たとえば、地域の果物を使った焼き菓子、地元の発酵文化を活かした調味料、伝統野菜を使ったスープやレトルト食品などは、地域性と持ち帰りやすさを両立しやすい商品です。観光地の売り場では「どこの商品か」「なぜその地域らしいのか」が短時間で伝わることが大切です。
インバウンド向けの食品には、原材料や食物アレルギー表示、食べ方の説明などを英語で記載しましょう。本来は、商品が世界各国の人々の手に渡ることを想定し、多言語対応するのが理想です。しかし、おみやげグルメのパッケージは表記できるスペースが限られているため、最低限の対応として英語での表記が求められます。
また外国人観光客は、商品名だけでは中身や味を判断できないことがあります。パッケージには、英語の商品説明、主要原材料、アレルゲン、食べ方、保存方法、地域の紹介を入れましょう。スペースが限られる場合は、二次元コードで多言語ページへ誘導する方法も有効です。
たとえば、日本人にはなじみのある「きなこ」や「味噌」「麹」などの食材でも、外国人観光客にとっては未知の食べ物である場合があります。原材料や味の特徴をわかりやすく説明すれば、購入前の不安を減らし、興味を持ってもらいやすくなります。
たとえば、食品メーカーの明治が販売するアイスクリーム「辻利 お濃い抹茶 チョコレート&クランチ」にも表記の工夫が見られます。この商品は、京都・宇治の老舗「辻利」の抹茶を使用しており、パッケージには日本語と英語、中国語で「辻利」ブランドの紹介や商品のこだわりを記載しています。
お土産向け商品のパッケージを見直す際は、「売り場で差をつける!地域メーカーが知っておくべき売れるパッケージの条件とは?」の記事も参考になります。売り場での視認性、商品特徴の伝え方、ターゲットに合わせた容量設計をあわせて確認しましょう。
参考:株式会社明治 プレスリリース(2025年4月14日発表)
インバウンド向けのお土産食品では、宗教や食習慣への配慮も重要です。世界人口の約25%の人々が信仰しているイスラム教では豚肉や豚由来の食品、アルコールの摂取が禁じられており、ベジタリアンやヴィーガンなど、動物性原料を避ける人もいます。
ベジタリアンの場合、その取り組み方はさまざまです。たとえば、肉や魚を避けるだけでなく乳製品や卵も摂らない「ヴィーガン」の人がいれば、卵と乳製品のいずれかは食べる人もいます。ベジタリアン人口も年々増加しており、インバウンド向けのおみやげグルメにおいても、こうした多様な食の価値観に対する配慮が欠かせません。
すべての食習慣に対応する必要はありませんが、どの層に向けた商品なのかを明確にし、食べられない人が誤って購入しない表示を整えることが大切です。アルコール不使用、動物性原料不使用、ハラル認証取得、ヴィーガン対応などの情報は、該当する旅行者にとって大きな安心材料になります。
さらに、食の価値観に配慮した食品は、そのような制限を持たない人にも好印象を与えることがあります。ハラルやベジタリアンに対応した食品は、原材料を明確に表示し、製造工程も徹底して管理されていなければなりません。そのため、結果として食の安全性の高さをアピールすることにつながります。
事例として、横浜の洋菓子メーカー「ガトー・ド・ボワイヤージュ」を紹介します。同社は、定番商品の「横浜馬車道ミルフイユ」など、3種類の商品でハラル認証を取得しました。これにより、食に制限があっても安心して購入できるおみやげとして、外国人観光客から人気を集めています。
参考:株式会社ガトー・ド・ボワイヤージュ「ハラール認証取得商品」
インバウンド向け商品をバイヤーに提案する際は、商品特徴だけでなく、想定売り場、ターゲット国・地域、価格帯、賞味期限、温度帯、ケース入数、販促POP、試食方法、販売実績をまとめておくと商談が進みやすくなります。
特に観光地や空港、ホテル売店、百貨店、道の駅などは、売り場ごとに求められる商品条件が異なります。バイヤーが導入後の売り場をイメージしやすいように、陳列イメージ、POP、英語の商品説明、ギフト展開の可能性も用意しましょう。
提案資料の作り方は、「食品バイヤーとの商談ではどんな情報が必要!?」の記事で詳しく解説しています。商品規格、価格、ロット、賞味期限、販促素材を整理しておくことで、商談後の検討も進みやすくなります。
また、販路開拓全体の進め方を知りたい方は、「地方食品メーカーがバイヤーとつながるには?販路開拓の基本のキ」の記事もあわせて確認してください。地域グルメの魅力を世界に届けるために、商品づくりと売り場提案の両面から準備を進めましょう。
インバウンドを対象とした商品開発のポイントは、次の通りです。
● 小さくて軽量、日本らしさを感じるデザインなど、手に取られやすい商品にする
● 原材料や地域の魅力などを、多言語や二次元コードを活用してわかりやく伝える
● 宗教や食に対する多様な価値観に配慮して、誰もが安心して食べられるようにする
インバウンド向けお土産食品は、地域食品メーカーにとって新しい販路を広げるチャンスです。重要なのは、地域性を出すだけでなく、外国人観光客が安心して選べる情報設計にすることです。
今や大都市だけでなく、地方においてもインバウンド需要を見据えた商品開発が必要です。外国人観光客に選ばれるおみやげグルメを開発できれば、地域の魅力を世界に発信できると同時に、自社の強みをアピールするチャンスにもなります。今こそ、地方グルメの良さを最大限に活かした、世界に誇れる商品づくりに取り組みましょう。
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