実践商談ノウハウ
昨今、地方発の「クラフト商品」が消費者の関心を集めています。クラフト商品とは、手作業で作られるこだわりの商品のこと。このような手間暇かけた逸品は、食品メーカーや販売店の売上アップだけでなく、ブランド力向上にも寄与する可能性があります。
今回は、地方の食品メーカーが手がけるクラフト商品の魅力と、その開発・製造がもたらすメリットについて解説します。あわせて、地方発クラフト商品の成功事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
そもそも「クラフト(craft)」とは、技能、技巧、工芸を意味する言葉です。近年は、主に食品や飲料の分野で、作り手のこだわりが詰まった少量生産の商品に対して使われています。
クラフト商品が多くの消費者を惹きつけているのは、大手メーカーの大量生産品にはない独自の魅力があるためです。ここでは、クラフト商品がもつ主な魅力を3つ紹介します。
地方発のクラフト商品は、開発や製造の背景にあるストーリーも商品の特徴のひとつとなります。たとえば、地域の果樹園を経営する一家が作ったジャムであれば、「栽培から加工、瓶詰めまでを〇〇さん一家が手がけた」というストーリーが、そのジャムの唯一無二の価値となります。
商品の味だけでなく、商品にまつわるストーリーも楽しめることは、クラフト商品の大きな強みです。ストーリーに共感してもらえれば、作り手を応援する気持ちが喚起され、消費者の購買意欲が高まります。さらに独自のストーリーが、その商品の特別感を一層際立たせます。
多様化する消費者の嗜好に応えられることも、クラフト商品の魅力です。とくに若年層では、糖質制限やグルテンフリー、ベジタリアン、ヴィーガン、ソバーキュリアス(お酒を飲める人があえて飲まない選択をすること)など、食に関するさまざまな価値観が広がりつつあります。
大量生産される一般向けの商品では、ニッチなニーズを満たすことは容易ではありません。しかし、少量生産のクラフト商品であれば、多様化する嗜好にも応えることが可能であり、その柔軟性が新たなファンの獲得にもつながります。
クラフト商品は少量生産だからこそ、細部まで品質を追求することが可能です。そのため、価格の安さよりも品質の高さを重視する消費者から高い支持を得ています。
近年の物価上昇により、安さを優先する消費者が増える一方で、商品を品質で選ぶ層も確実に存在します。普段は節約しつつ、ときにはプチ贅沢として高品質な商品を選ぶといった、メリハリを付けた買い物を楽しむ人も少なくありません。
手間暇かけて作られた高品質な商品は、高価格でも「価値に見合う」と受け入れられやすく、結果としてブランド力の向上にもつながります。
クラフト商品の開発・製造は、地方食品メーカーにとって売上増加とブランド力強化を同時に実現できる有効な手段です。ここでは、クラフト商品の開発・製造が地方食品メーカーにもたらすメリットについて解説します。
クラフト商品は価格を高めに設定しやすいため、結果的に売上アップにつながります。クラフト商品の強みは、ストーリー性や品質の高さ、希少性といった「価格以上の魅力」があること。そのため、商品に価値を認めた消費者は、価格が高くても納得して商品を手に取ってくれます。
近年の物価上昇により、価格競争はますます激化しています。地方の食品メーカーが値下げ競争に巻き込まれても、大手企業には太刀打ちできません。価格以上の価値を届けるクラフト商品を開発することは、価格競争から脱却し、売上拡大を実現する有効な方法といえます。
クラフト商品はオリジナリティを打ち出しやすく、他社との差別化が容易です。クラフト商品に使用するこだわりの素材や背景にあるストーリーは、他社では再現できません。たとえ類似品が市場に出回っていたとしても、その商品ならではの「唯一無二の価値」を示せば、消費者の心をつかめます。
さらに、「唯一無二の価値」を磨くことで、クラフト商品のブランド化も可能です。ブランドを支持するファンが増えれば、顧客基盤が安定し、長期にわたる売上の確保にもつながります。
クラフト商品は製造に手間がかかるため、簡単には生産量を増やせません。しかし、この少量生産こそが商品の価値を高める要素となります。
スーパーマーケットやコンビニエンスストアに並ぶ商品では、販売機会の損失につながる欠品は致命的です。一方で、クラフト商品は生産量が限られることで希少性が生まれ、人々の関心を集めます。
すぐに商品を提供できなくても、予約販売を導入すれば購入者を確保できます。期待を裏切らない高品質な商品を届ければ、「待った甲斐があった」と購入者の満足度も高まるでしょう。
クラフト商品は消費者に向けた訴求力があり、メーカーにとっても開発する意義が十分にあるものです。ここでは、地方の食品メーカーがクラフト商品を開発し、成功を収めた事例を紹介します。
奈良県にある「福岡正信自然農園」では、農哲学者・福岡正信の理念を受け継ぎ、自然農法で野菜や果物を栽培しています。収穫した農作物をそのまま販売するだけでなく、シロップや果実酒などの加工品も提供しています。
なかでも人気なのが「甘夏マーマレード・クラシック」。その名前の通り、イギリスの伝統的な味の再現を目指して作られたマーマレードです。手間を惜しまず丁寧に作っていることを打ち出し、一般的なマーマレードよりも高価格でありながら、多くのファンを獲得しています。
栽培や加工に真摯な姿勢で取り組んでいることが伺えるシンプルなラベルは、グッドデザイン賞を受賞。一流百貨店や高級食材をそろえる専門店など、本物志向やストーリー性を重視する顧客が訪れる店舗で販売されています。
参考:福岡正信自然農園「甘夏マーマレード・クラシック」
福井県の「米五のみそ」は、伝統の製法を守り続ける老舗の味噌蔵です。国内産の原料にこだわり、地元産の大豆や米を使った地産地消にも取り組んでいます。味噌そのものはもちろん、酢味噌や田楽味噌、味噌を使ったお菓子なども手掛けています。
とくに注目したいのが「極味」という味噌です。徹底的に手間暇かけて作られることから、仕込める量が限られています。そのため店頭に並ぶことはなく、年間200名限定のオンライン予約販売のみで提供しています。購入者はその味わいに感動し、リピートするファンも少なくありません。
参考:米五のみそ「極味」
「コエドブルワリー」は、日本におけるクラフトビールの先駆けともいえるブランドです。その母体は、埼玉県川越市にある有機農業を基盤とする食品メーカー、「協同商事」です。
川越では昔から、土壌を健全に保つために麦を植える習慣がありました。実った麦はそのまま土壌に還されていましたが、その麦をビール原料に転用する発想から、コエドブルワリーはスタートしました。
同社は、川越の伝統品種「紅赤(べにあか)」というサツマイモを使ったビール開発にも着手。ドイツから職人を招いて5年間ビール作りを学び、技術力も高めました。さらに、当時「地ビール」として扱われていたジャンルを「クラフトビール」と再定義し、ブランド展開を進めました。
コエドビールは現在、日本を代表するクラフトビールブランドのひとつとなり、高く評価されています。
参考:コエドブルワリー
地方の食品メーカーが手がけるクラフト商品の魅力は、商品の背景にあるストーリー、多様な嗜好に応える柔軟性、少量生産だからこそ可能な品質追求にあります。
クラフト商品は他社と明確に差別化できるうえ、希少性という付加価値が得られるといったメリットがあります。その結果、商品の訴求力が高まり、高価格にもかかわらず顧客に選ばれる逸品となるのです。
小規模メーカーだからこそ可能な、素材や手仕事への徹底したこだわりが、大量生産では生み出せない価値を作り出します。消費者に「唯一無二の価値」を提供する、地域の魅力が詰まったクラフト商品を展開しましょう。
FOOON掲載商品が気になったら、
バイヤーズキッチンで
売り手と商談ができます!
バイヤーズキッチンは
地域の食が集まるコミュニケーションサイトです。
FOOON掲載商品以外にも多数の地域食品が出品中!
全国から集まった食品の売り手と
オンライン商談できる他、
試食展示会などのイベントも開催しています。