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【後編】~地域食品と通販の可能性~

目利きの視点

【後編】~地域食品と通販の可能性~


通販会社バイヤーインタビューの後編は、地域食品と通販との相性の良さと、地域メーカー様が取り組むべきこと、今後の通販に関する展望などについて伺います。


☆通販バイヤーインタビュー

株式会社三越伊勢丹 食品・レストラングループ定期宅配営業部 ISETAN DOOR マーケティングバイヤー奥村優太様】
【株式会社サンクゼール EC・DXビジネスユニット ユニット長 宮本卓治様】
【株式会社カタログハウス 食品事業部 マネージャー 横山輝様】 (左から 順不同)




「地域食品」と「通販」の可能性

―― Web及びカタログなどを媒体とする「通販」ですが、コロナ禍に関わらず、地域食品にとって地理的要因による障壁を低くすることが出来ますし、他にも注目に値するメリットとがあるかと思います。そういった通販と地域食品にはどのような可能性があると感じていますか?


株式会社三越伊勢丹 奥村様

通販に於いての地方食品の可能性というのは、多分昔から言われていたと思いますが、実際消費者であるお客様にとっても探しやすいし、分かりやすいですし、買いやすい、というのはあると思ってます。
ただ、まだまだ「現地に行っても見逃してしまうようなもの」や、「まだ見ぬ食」といったものに関心の高いお客様が多く存在しますので、今後さらに拡げていくためには、それらの商品を発見・紹介していかなければならないと思っています
ISETANDOORでは商品を“週のおすすめ”、“時期のおすすめ”といった「特集ページ」を組んでご紹介させていただいているので、お客様がその時期に何がお勧めなのか、という事に辿り着き易い造りになっています。例えば、ISETANDOORであれば、北海道特集や京都特集を出した時に、その地域の食というものを1商品単体ではなく1ページでそれを表現できます。
また、実際の“リアル店舗での催事”と“通販”の比較をしてみると、例えば「京都展」は伊勢丹新宿店で年二回行っていますが、そこでは“出来たての物が食べられる”、“職人さんに会える”、などのお客様へのメリットがある一方で、店舗の面積が限られますから出展されるメーカー様の数は限られてしまいます。なかなか新しい風は吹きづらいのです。そういう点では「通販」は多くのメーカーさんにとって“チャンスがある”と言えるでしょう。実際、店舗での催事自体は減っています。新宿店で言えば北海道の催事が無くなりました。他の百貨店やスーパーの行う催事との差別化が難しいことと、人件費の問題もあるんです。
そういった意味でも、”通販”は地方のメーカー様にとっては可能性があるものだと思います。



株式会社サンクゼール 宮本様

地域の食品と通販は非常に相性が良いと思っています。店頭だけではなかなかその商品の価値や魅力というものを伝える手段も限られてしまうのですが、通販ですと記事や動画などの”コンテンツ”でしっかりお伝えすることもできます。そういった点で店頭以上に情報をお伝えして買っていただくことができると思います。
例えば私たちのショップの中で、生牡蠣の殻付きのカキや、冷蔵系の商品でキムチの商品があるのですが、それが非常に売れています。普通のリアルの催事などで生牡蠣を買うのは、なかなか勇気が要ることだと思うんですね。家でどう調理しよう?とか。しかしそういったところもネット通販では、「食べてみた」のコンテンツで、”届いてから箱を開けて美味しく食べるまで”というところをしっかりと理解していただいて「じゃあ、ちょっと買ってみようかな」というように思ってもらえることできますので、店舗では短い時間で購買を決めることが難しい商品も、通販だからこそしっかり吟味して、購入してもらって満足していただける、という流れが作れると思っています。



株式会社カタログハウス 横山様

大手食品メーカーの商品ですと圧倒的なブランド力があるので、消費者は当たり前のように信頼して買っていきます。一方で地方の名の知られていないメーカーさんの商品は、目も向けてくれない、という場合もあると思うんです。
例えばこの間の日庄さんで紹介いただいた石巻の末永水産さんの”牡蠣の潮煮”を例にとると、”牡蠣の潮煮”は全国では知られてないんですよね。でも、そのメーカーについての話を聞くと「なるほど、これは美味しそうだ」と思えるわけです。その地元の方からすると、当たり前の食べ方とか食べ慣れちゃっているものなのだけど、私の方からすると、そんな貴重なものなんだとか、潮煮って本当に牡蠣の持ってる水分だけで煮出しているんだ、牡蠣の旨みが凝縮されて・・・なるほど!といった、合点がいく部分がピンとくるんです。そういう食材は地方にいっぱいあるんですよね。工業化に近いような形で大量生産されている食品と比較しても、その「知られてない地方の食材の商品」は、勝てる要素というものがたくさんあるんです。そういったところを「通販」は補完していく事の出来る手段だと思います。








末永水産 「牡蠣の潮煮」

▼牡蠣の潮煮の商品情報はコチラ








▼三陸宮城は石巻の海のとれたての牡蠣を牡蠣の中から迸(ほとばし)る旨味エキスの「潮(うしお)」のみでじっくり煮込む。水や塩さえも使わない、地元漁師に伝わる潮煮製法で牡蠣本来の旨味を閉じ込めました。「濃厚な100%牡蠣の旨味」を味わえます。
▼三陸宮城は石巻の海のとれたての牡蠣を牡蠣の中から迸(ほとばし)る旨味エキスの「潮(うしお)」のみでじっくり煮込む。水や塩さえも使わない、地元漁師に伝わる潮煮製法で牡蠣本来の旨味を閉じ込めました。「濃厚な100%牡蠣の旨味」を味わえます。

牡蠣の潮煮

第26回全国水産加工品総合品質審査会「農林水産大臣賞受賞」、第25回全国水産加工品総合品評会「大日本水産会長賞受賞」、第38回宮城県水産加工品品評会「水産庁長官賞受賞」、「JR東日本おみやげグランプリ新人賞受賞」 他受賞多数!


――地域食品と通販の相性の良さをそれぞれの視点でお話ししていただきました。地域食品を販売していくには「商品の価値を消費者に理解してもらい購入につなげる」、という事が必要不可欠です。その場所や流れを作ることができる「通販」は、地域食品メーカー様にとっては検討すべき販売手段と言えるでしょう。


商品仕入れる際に見ていることとは?

―― 通販商品を選定・商談をする際、どういったところをポイントとして見ていますか?


株式会社三越伊勢丹 奥村様

バイヤーとして重要視していることは、絶対的に「味」です。
通販サイトならでは、というところでは「パッケージの強度や仕様」が配送配送センターで一律に扱う事ができるかどうか、という点です。ピックアップされて箱に詰められ、配送業者を介してお届けされる、ということに耐えられるかどうかですね。それは、リアル店舗でお弁当に蓋をして渡すのと全然異なっています。お届けできないものは我々も仕入れることは出来ませんので、条件面での折り合いとともに、宅配サイトでの仕様に耐えられる物であるかどうか?という点はとても重要です。



株式会社サンクゼール 宮本様

現在、メーカー様が通販を始めるのは非常に簡単になってきています。ご自身でも無料でWebサイトを立ち上げることもできたりすると思うのですが、実際にその通販サイトを”育てていく”のはなかなかハードルが高く難しい事です。まず必要になるのが”商品の設計“や、”どういった商品が用意できるのか”というところが重要になってくると思うんです。
通販ですと、安すぎても高すぎても売れないので、3,000円台ぐらいの価格帯で、送料を気にせず気軽に買える、と言った商品ラインナップがまずは軸になると思います。



株式会社カタログハウス 横山様

「この作物なかなか採れないんですよ」といった生産量が少ないことや希少性だけの訴求というのはなかなか難しいんですね。需要を作れる要素というのは、その商品の有用性、食品で分かりやすく言うと”健康成分”だったり、他より”うま味が強い”などになり、そこの部分の差別化というのは絶対必要になります。
それは素材じゃなくても加工方法とかでもいいんです。そのオンリーワンの要素に対してお客さんにお金を払っていただく、というぐらいの意識が必要かと思います。



――各社様ともに、通常の仕入れの視点はもちろん、通販で売れる「価格帯」「仕様」についても基準をお持ちです。メーカー様が初めて通販販路に取り組む際は、そのあたりの準備も整えておきたいものです。


「通販」の今後の動向について

―― 次に、「通販」の今後の動きやトレンドについてどのようになると予想されていますか?


株式会社三越伊勢丹 奥村様

いまISETANDOORのお客様の年齢層は40代が一番多いです。これは通常のリアルな百貨店より20歳ぐらい若い年齢なのです。とは言え、高齢化や少子化といった日本の社会の変化っていうのを考えた時に、「少量食べきりサイズの物」は恐らく引き続きリモートワークなどが残ることも考えると、非常に重要となってくるトレンドのひとつだと思っています。
あと個人的にやってみたい事があります。各地方の有名な物産の商品というのは、ある程度掘り尽くされた感じがあると思ってますので、その地方の商品を監修であったり、実際作ってもらうなどして製品化できれば、ただの取り寄せではなくて、お客さまへ本当に価値のあるものが提供できるのかな、と思っています。



株式会社サンクゼール 宮本様

食品で言いますと、例えばみんなで集まってパーティーをするために通販を利用する、そういった“ご褒美需要・ワンランク上の食事需要”などは今後も通販を利用される方は多くなる、と思います。実店舗や近隣の店舗だけだと揃わないものがネット通販だと揃えられるので、そういったところは確実にこれからも必要になって行くと思います。
また、カジュアルなギフトで食品を贈ること、例えば父の日や母の日のギフト需要というのも“久世福EC““たびふく“双方で伸びています。昨年の父の日に”たびふく“で、「冷凍のお寿司」のギフトが非常に多く売れまして、メーカーさん自身も「こんなに売れるんだ」と驚いていたんです。そういうものも、これからさらに増えていくんじゃないかなと思います。



株式会社カタログハウス 横山様

今、力を入れて行きたいのは、やはり健康要素が高い食品は、まだまだ地方にも沢山あると思うので、それを探して行きたいな、というのがまず一つです。
あとは、やはり自宅で簡単に食べれるもの、いかに手軽においしくこだわった料理を食べられるか、という事が重要になってきています。それは普段料理されている方が、楽をして美味しいものを食べられるという事になると、さらにおいしさが増す感覚になるわけですよね。そういう「簡単調理」「レンジで簡単」「手間を掛けない」とか、”簡単に美味しく食べれる”というのがキーワードかなと思ってます。



――各社様とも社会的な動向や、ネット通販の傾向などを捉えて、今後について考えられているようです。
地域食品メーカー様も販売戦略などを立案される際には、参考にされると良いかと思います。
それでは次に、地域メーカー様が通販に取り組む際に必要となるだろう事柄についてお聞きしていきます。


地域食品メーカーへの要望と期待すること

―― 地域食品メーカー様が「通販」を販売チャネルとして取り組んでいく際に必要なこと、また地域食品会社に期待することとはなんでしょうか?


株式会社三越伊勢丹 奥村様

先ほども商品選定のところで、最も大切なのは「おいしいこと」だと話をしましたが、「どう美味しいのか」を我々小売に伝えることだと思います。我々に“想い“を余すことなく伝えるために、しっかりと自分の商品を言語化する事を期待しています。
メーカー様は、その時に、「それでお客様に本当に伝わるのか?」「バイヤーを納得させる事が出来て、はじめてお客様に伝わることではないのか?」という事を考えて、しっかりと自分の商品について、どういうストーリーのもとに作った物で、どういう美味しさがあるのか?という点を、小売とコミュニケーションを取って欲しいです。そういったことを世に発信したりすることは我々がやる事なので、我々とメーカー様で齟齬の無い認知というものが必要になってきます。その部分をしっかり言語化するという事がとても大切だと思っています。



株式会社サンクゼール 宮本様

“たびふく“で扱っている商品などでも、店舗で売っているものをそのままWebページに並べてしまいますと、なかなか売れなくて勿体ないな・・・と感じることがあります。
やはり、「お客様が何を求めているか」という事を把握して、「この時期にはこれが売れる」とか「今の家庭ではこういう食事をしているから、こういう物が売れる」とか、そういったことを理解すると、商品の企画も結構変わってくると思います。“たびふく“ですと、そういったメーカーさんと「このような商品にできますか?」とか「こういうセットにできますか」というようなやり取りをさせていただいて、実際にそれで売上が非常に伸びるということもありますので、同じ商品でもやはり”見せ方“とか、”お客さんが望んでいる形にする“というのがとても重要だと思います。



株式会社カタログハウス 横山様

競合品調査や市場分析も無く、売りのターゲットも定まっていないまま商品提案されるメーカーさんがおられます。大手メーカー・中堅メーカーの競合商品を調べ、そこがどういう訴求ポイントで売っているのか、価格設定はどれぐらいなのか、という所を知った上で、商品企画とか商品提案をしていかないと、なかなか受け入れられないはずです。メーカー様の「良い物をこだわって作っている」という気持ちの部分=「情」だけでは、なかなか商品は売れないものです。やはり客観的な「情報」と「情」の二つが合わさって購入に至るわけです。
メーカーさんが自分で作って育てた商品は、もう我が子のように可愛いと思うんです。そうすると、もう他商品と比較すること自体がナンセンスみたいになると思いますが、実際に社会出たら比較されるわけです。その商品が世に出て行ったら、どういう商品と比較され、競争しなきゃいけないのか、ということを考えないといけないわけです。
また、とにかく一にも二にも個性を作る、個性を与えるという事を意識的にやると、商品がちょっとずつ光ってくる。それはどこで売れるか分からないですが、個性を出すことによって、どこかで受け入れられると思います。



――3社様ともにお話しいただいたのは、通販に限らずどこの売り先に対しても非常に重要となる事ばかりでした。その他大勢の商品群の中で埋もれずに、逆に強みを認識し伸ばす商品戦略と、強みを伝える販売戦略は、通販においても欠かせない取り組みであることは間違いありません。



最後に地域食品メーカーへメッセージを

―― 最後に、地域食品メーカー様へのメッセージをお願い致します。


株式会社三越伊勢丹 奥村様

弊社は宅配通販ですので、賞味期限がある程度短くても大丈夫ですし3温度帯対応しています。
また、オイシックスのシステムを利用しているので、物流拠点もオイシックスさんの倉庫に納品していただいて、そこから全国発送になります。システム的に産直対応はしておらず、すべて買取でのお取引になります。
基本的に、ここまでのお話を汲んでいただいた上でお声かけ頂ければどんなお取引先様とも話は聞くようにしています。一緒に地方を活性化していき、食文化を未来に残していけるようなメーカーさんにはいつでもお声をかけていただきたいと思っています。



株式会社サンクゼール 宮本様

メーカー様が、お客さまの望んでいるものを知って、それに合わせていろいろ変わっていく、といった取り組みをしていくと、商品が売れますし、私たち “たびふく“としてもそうしたことをやっていきたいと思っています。Webの世界では、地方の食品メーカーさんだけでは難しい取り組みもありますので、我々の”たびふく“は、その部分を生産者の皆さんと一緒に考えながら、補完していく、アドバイスというよりは「一緒に考えていきましょう!」という目線の事業なのです。



株式会社カタログハウス 横山様

灯台下暗しで、「作り手が売り手にはなかなかなれない」といったことは、絶対どこにでも当てはまる話で、私もある商品を担当していて周りが見えなくなって、商品の本質からちょっと離れてしまう、ということがあります。それはやはりメーカーさんも同じで、商品を作るという川上に行けば行くほどその商品の良さの当たり前のことに気づいてなかったりします。そのようなものを、丁寧にシンプルに説明して行くという事は、私どもの義務というか役割だと思っています。



~各社Web通販サイトご案内~

ISETANDOOR
https://isetandoor.mistore.jp/
旅する久世福e商店
https://kuzefuku-arcade.jp/
8時だよ!通販生活 公式
https://www.cataloghouse.co.jp/








季刊誌「益軒さん」(2022年春号)
季刊誌「益軒さん」(2022年春号)

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2022/4/19

[スタッフ所感]

一口に通販といっても様々なスタイルがあり、販売先としてそれぞれに適した商品、必要な条件などがあります。そのため、それらを見極め選定してからアプローチ&商談を行う必要があると言えるでしょう。。
一方で今回インタビューにご協力いただきました3社のバイヤー様が共通してお話ししてくださった、「自社商品の分析」や、「販売戦略の組み立て」、これは通販に限らず、商品を販売していくうえでもっとも大切な事です。
それらを踏まえたうえで、今後さらに伸長が見込まれる「通販」を販路として検討してみてはいかがでしょうか?
バイヤーズキッチンも各地域メーカー様のお力となれるよう、通販会社様が参加される商談会の開催や、売り先、販売戦略に関するアドバイスなども行っておりますので、お気軽にご相談ください。
スタッフY




 

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【前編】~地域食品と通販の可能性~
2020年に始まったコロナ禍を契機として、いまだかつてないほど「通販」が注目されています。
消費者に「通販」の利用価値が認識され、コロナ感染状況の大小に関わらず、今後は有望な販売チャネル として検討に値するものになるでしょう。
今回のインタビューは、通販においてそれぞれ独自のポジションを築かれている3社へ個別にインタビューし、お話しを伺いました。


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