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食品ブランディングとは?地方食品メーカーが全国で選ばれるための戦略

特集

食品ブランディングとは?地方食品メーカーが全国で選ばれるための戦略

自社の商品や地域の食材をより多くの人に届けるうえで、食品ブランディングは有効な手段です。地方発の食品ブランドが全国市場で存在感を示す事例は、意外と多くあります。しかし、おいしい商品や高品質な商品が、必ずしもブランドとして受け入れられるわけではありません。食品ブランディングで大切なのは、自社の強みを正しく把握し、買い手の視点に立つことです。



 食品ブランディングとは、商品そのものだけでなく、自社の強み、ターゲット、商品コンセプト、パッケージ、販路、情報発信を一貫した価値として設計し、顧客に「この商品を選びたい」と感じてもらうための取り組みです。この記事では、地域食品のブランディングを成功させるための考え方と、実践のポイントを解説します。

 

※この記事は8分で読めます


【この記事でわかること】
●     地方食品メーカーが自社の強みを見つけ、戦う市場を選ぶための考え方
●     買い手視点に立ったコンセプト設計と商品づくりのポイント
●     メディアやSNS、Webサイトを活用した情報発信のコツ

食品ブランディングの第一歩は「自社の強み」の整理


ブランディングではまず「自社の強みは何か」を考えることが大切です。顧客が「ほしい」と思うブランドには、「これでなければならない」と感じさせる理由があります。その根拠となるのが自社ならではの強みであり、強みを明らかにすることで展開すべき市場も見えてきます。
 地方の食品メーカーにとって強みとなり得るポイントは、製品・企業・地域の3つです。「製品」の強みを検討する際に注意したいのは、「おいしい」と「安心・安全」は前提条件であり、他社との差別化は図れない点です。原料や素材、製法などに焦点を当て、自社ならではのこだわりを見直してみましょう。
 「企業」の強みとは、生産から加工、販売までを一貫して行えるなど生産体制に関するものと、創業100年といった歴史に関するものがあります。また、みかんの産地で知られる愛媛や和歌山、観光地として人気の高い京都や沖縄のように、「地域」が持つイメージもブランド構築に役立ちます。
強みが整理できたら市場を分析し、どのポジションで戦うかを明確にしましょう。現代は消費者の嗜好や生活スタイルが多様化しています。一人暮らしや夫婦のみの家庭など少人数世帯が増加し、一度に購入する量が少なくなりました。一方で、自分の好みにあった商品をためらいなく購入できるため、より個性が強い商品が選ばれやすい時代になっているともいえます。 ターゲットを検討する際は、地方食品を購入する消費者のニーズも参考になります。
 
今後はシニア向け市場の拡大も予想され、高齢でも食べやすく、栄養バランスのよい食品のニーズが高まるでしょう。海外市場に目を向ければ、さらなる可能性が広がります。 海外市場を検討する場合は、地方メーカーでも取り組める食品輸出の基本ステップも確認しておきましょう。
 
市場が求める価値は日々変化しています。自社の強みが最も活きるポジションを見極め、戦う市場を的確に選びましょう。

食品ブランディングに欠かせない買い手視点の商品づくり


商品設計で軸となるのはコンセプト、つまり「顧客に提供する本質的な価値」です。コンセプトには、自社の強みや商品を選ぶべき理由、顧客に提供できる体験などを表現することが大切です。ただし、差別化を意識するあまり、多くの要素を盛り込むのはおすすめできません。顧客の印象に残るブランドをつくるためには「特徴を一言で伝える」シンプルさが重要です。
 
商品を選ぶ理由として「ストーリー」を打ち出す方法があります。ここで注意したいのは、作り手と買い手でストーリーのとらえ方が異なる点です。作り手は、ストーリーを「商品が誕生した経緯」ととらえがちですが、それが必ずしも買い手のメリットになるとは限りません。買い手にとってのストーリーとは、「この商品を選んだ自分を納得させるための理由」です。
 
たとえば、素材にこだわったクラフトビールを、わざわざ取り寄せて飲む消費者を考えてみましょう。この消費者の選択を支えているのは「素材にこだわったビール」というストーリーです。買い手にとって、このストーリーは「なぜ取り寄せる手間をかけてもこのビールを選ぶのか」という自分自身への説明として機能しています。
商品企画では、食品そのものだけでなく、ネーミングやパッケージ、商品を届ける仕組みもあわせて検討しましょう。
 
ネーミングやパッケージには、情報を詰め込みすぎないことが大切です。素材や製法のこだわりなど作り手が届けたい情報が満載でも、買い手が知りたい情報が抜けていては意味がありません。商品を買うことで得られるメリットや、ほかの商品と何が違うのかなど、消費者が知りたい情報を簡潔に伝えられるネーミングやパッケージを意識しましょう。 具体的な改善ポイントは、地域メーカーが知っておきたい売れるパッケージの条件でも解説しています。
 
商品を届ける仕組みとは、ECサイトでの商品の見せ方やサイト自体の使いやすさ、商品に同梱する説明カードなどが挙げられます。これらも、コンセプトを軸に設計することが大切です。 販売先の選び方については、地方食品メーカーの販路開拓の基本もあわせてご覧ください。

食品ブランドを育てる情報発信


商品を少しでも多くの顧客に届け、ブランドを育てるためには、メディアやSNSを活用した情報発信が欠かせません。 実践方法は、地方食品メーカーのSNSプロモーションで詳しく紹介しています。
 
テレビや雑誌などのメディアは以前より影響力が低下したとはいえ、ターゲット層によっては今も有効な情報発信手段です。ただし、メディアには毎日大量の情報が寄せられます。その中から取り上げてもらうためには、わかりやすくて話題になる特徴が必要です。
 
SNSを利用するのは、今や若者だけではありません。2024年に総務省が実施した調査によると、60代のInstagram利用率は前年の22.6%から34.7%へと10ポイント以上アップしました。YouTubeについては、50代の80%以上、60代でも70%以上が利用しています[1] 。年代を問わず多くの人が利用しているSNSを、情報発信手段として活用しない手はありません。
 [1]参照:https://www.soumu.go.jp/main_content/001017241.pdf PDF84ページ
SNSには、話題性のあるものが「いいね」を集めやすい特性があります。消費者が「投稿したい」と思える商品は購買につながるだけでなく、SNSに投稿されることで宣伝にもなります。このような消費者心理を意識したSNS活用が、ブランドの認知拡大につながるでしょう。
 
WebサイトやECサイトも定期的な見直しが必要です。デザインや色、言葉遣いなど、ブランドのターゲットが見やすく情報を受け取りやすい設計になっているかを確認します。掲載するコンテンツも、作り手が伝えたいことではなく、ターゲットが知りたいことを基準に選びましょう。
 
参考:総務省情報通信政策研究所「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」

食品ブランディングの成功事例|糸島産天然真鯛のおどり干し(鯛めし用)


福岡県糸島市は、地域ブランディングを支援するコンサルタントとともに「糸島ブランド」の確立に取り組みました。コンサルタントがまず着手したのはターゲットの選定です。糸島市には小規模ながら高品質な商品を作る企業が多いという特性を踏まえ、百貨店の宅配カタログを販路に選択。プレミアム感のある商品を求める消費者をターゲットに設定しました。
 
地元の方とコミュニケーションを重ねるなかで生まれたのが、「糸島産天然真鯛のおどり干し(鯛めし用)」です。糸島市は天然鯛の漁獲量が多く、鯛が獲れすぎた際は漁師の母親たちが鯛を開いて冷凍保存し、鯛めしにする習慣がありました。これは地元では当たり前の習慣でしたが、外部の視点から見ると大きな商品価値を持っていたのです。
 
商品化にあたっては、鯛の小骨を丁寧に抜き、三合炊きの炊飯器にぴったり収まるサイズに設計するなど、調理のしやすさや食べやすさにもこだわりました。
この事例が成功した理由は二つあります。一つはプレミアム感のある商品を求める消費者をターゲットに設定し、そのターゲットに合った販路を選んだこと、もう一つは買い手視点に立ったコンセプト設計です。
 
「糸島の天然鯛を手間暇かけて加工した商品」という作り手のストーリーだけでなく、調理のしやすさや食べやすさという実用的な価値を商品に組み込んだことで、買い手が「高くても取り寄せる価値がある」と判断できる理由が生まれました。地域のプレミアム感と実用性が両立したことで、顧客に選ばれ続けるブランドになったのです。
 
参考:特許庁広報誌「とっきょ」40号「地方からヒットを!ブランディング戦略」

食品ブランディングで地方から全国へ。選ばれるブランドを目指そう



食品ブランディングは、潤沢な資本や広告費を持つ大企業だけが行えるものではありません。自社の強みや地域の魅力を見つめ直し、適切なポジションを選ぶことで、地方発の食品ブランドが全国に届く可能性は十分にあります。コンセプト設計や商品企画、情報発信において、作り手の「作りたいこと」より買い手の「知りたいこと」を優先する視点の転換が、選ばれるブランドへとつながります。
 
小さくても誇れる地域のブランドをつくるために、自社や地域を見つめ直すことから始めてみましょう。
 
参考:
株式会社日本政策投資銀行南九州支店 株式会社日本経済研究所ソリューション本部「地域発食品メーカーのブランド戦略調査」
渡辺和博著「地方発ヒットを生む 逆算発想のものづくり」日経BP社、2018年

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