実践商談ノウハウ
食品メーカーにとって商品写真は、商品の魅力や価値を伝えるための重要な手段です。商品写真の印象が、消費者の購買行動を左右することも少なくありません。商品写真の撮影は業者や専門家に依頼できますが、ポイントを押さえれば自社での撮影も可能です。自社で撮影できれば、撮影にかかるコストを抑えられるだけでなく、SNSをはじめとした日々の情報発信にも柔軟に対応できます。 本記事では、商品撮影に必要な道具や基本的な撮影手順、食品を魅力的に見せるためのポイントを解説します。 ※この記事は9分で読めます
【この記事でわかること】
商品写真を撮影する際にそろえたい道具は、次のとおりです。
食品などの動かないものを撮影する場合は、コンパクトデジタルカメラでも問題ありません。後ほど解説する、絞りや露出を手動で設定できる機種がおすすめです。スマートフォンでも対応できますが、写真の仕上がりにこだわる場合は、コンパクトデジタルカメラやミラーレス一眼カメラなどを使うとよいでしょう。
スマートフォンでは、撮影前にレンズを清掃し、商品に不要な汚れや包装のゆがみがないか確認します。三脚や台で端末を固定し、フラッシュをオフにして、まず窓からの光で試します。
見せたい部分を画面で指定してピントを合わせ、明るさを調整します。操作方法は機種により異なります。撮影後は画面を拡大し、ピント、手ぶれ、白飛びを確認します。
撮影時に商品を置く紙のことを背景紙と呼びます。背景紙がなければ、撮影している部屋の壁やテーブルが写り込んでしまいます。背景紙には、サイズが大きく厚みがあり、色が豊富にそろっているケント紙などを使います。画材店やカメラ店などで、撮影する商品に合う大きさと色を選びます。
レフ板とは、光を反射させるための板のことです。レフ板を使って影の部分に光を当てたり、黒色のレフ板で光の反射を抑えたりすると、写真の仕上がりが美しくなります。
レフ板は、段ボールにケント紙を貼り付けたり、カラーボードをつなぎ合わせたりすれば手作りできます。レフ板に使う紙やボードは、商品や光を当てたい範囲に合わせた大きさを用意します。
商品写真は、窓から差し込む自然光でも撮影できます。ただし、自然光は天候や時間帯によって光の雰囲気が変わります。さらに夜間は撮影できないため、照明機材があると便利です。撮影専用の照明に加え、卓上ライトなどを利用する場合は、明るさや光の色、発熱、使える付属品を確認します。
商品写真の撮影は、次のような流れで進めるとスムーズです。
ここからは、それぞれのプロセスについて詳しく解説します。
実際に撮影に移る前に、撮影したい写真のイメージを固めましょう。商品写真には、商品の特徴を正確に伝える「製品写真」と、商品の雰囲気や魅力を伝える「イメージ写真」があります。とくにイメージ写真は、消費者が商品を購入するきっかけになるため、撮影プランを丁寧に考えましょう。
まずは商品の訴求ポイントを整理し、どのように撮影するとそのポイントが伝わるかを考えます。あわせて、商品のターゲット層やブランドイメージ、価格帯などから、どのような演出が適しているかを検討します。
たとえば、贈答用の和菓子であれば、和紙や和柄の布を使って上品に演出すると効果的です。無添加や国産原料使用など、素材の良さをアピールしたい食品なら、生成りの布ややわらかな光をうまく使うと安心感を引き出せます。
撮影プランを考える際は、次のようなポイントを意識してみましょう。
写真を通して商品をどのように見せたいかを明確にし、それに合わせて必要な道具を用意しましょう。
あらかじめ決めておいた撮影プランに沿って、商品や背景紙などを配置し、カメラの位置を決めます。三脚にカメラを取り付けたら、先ほど決めたカメラの位置に三脚の脚を広げて設置し、高さや角度を調整しましょう。
ライティングには、自然光を利用する方法と、照明機材を使う方法があります。自然光で撮影する場合、晴天の日は光が強すぎることがあります。その際は、窓から入る光をトレーシングペーパーや白いシーツでやわらげる方法があります。トレーシングペーパーは、画材店や大型カメラ店などで、1,000〜3,000円程度で購入できます。使う場合は、設置場所と落下・火気への配慮を確認して使用するようにしましょう。
照明機材を使う場合は、撮影イメージに合わせて、照明の位置や光を当てる方向を調整します。料理写真を撮影する際は、料理の後ろから光を当てる「逆光」が基本です。ただし、料理の手前側が暗くなりやすいため、料理の横側にも照明を設置し、補助的に光を当ててもよいでしょう。
照明の光が強すぎると感じたら、ライトにトレーシングペーパーを取り付け、光を透過させてみてください。光の質がやわらかくなり、写真がやさしい印象に仕上がります。
影が強すぎるときは、レフ板を活用しましょう。光が入ってくる側に対して、向かい合う位置にレフ板を置きます。レフ板の位置や角度によって写真の印象が変わるため、カメラのファインダーや液晶モニターを確認しながら調整してください。
カメラの設定を調整することで、写真の仕上がりは大きく変わります。カメラにはさまざまな撮影モードがありますが、商品撮影では「絞り優先モード(Aモード/Avモード)」を使うのがおすすめです。
まず覚えておきたいのが、ピント・絞り・露出です。ピントが合っていなければ、見せたい部分がぼやけた写真になってしまいます。どこを見せたいのかを決め、その部分にきちんとピントを合わせることが大切です。
ピントが合う範囲は、絞りの設定によって決まります。絞りとは、レンズを通る光の量を調整する仕組みで、絞り具合を表すのが「絞り値(F値)」です。
絞り値が小さいほどピントが合う範囲は狭くなり、背景がぼやけやすくなります。反対に、絞り値を大きくすると全体にピントが合いやすくなり、背景もくっきり写ります。商品の特徴を伝える「製品写真」では、商品全体がはっきり写るよう、絞り値を大きめに設定しましょう。
露出とは、カメラのセンサーに取り込まれる光の量を指し、写真の明るさを左右します。絞り優先モードでは、絞りを設定すると露出は自動的に決まりますが、撮影者が露出を調整することも可能です。カメラが選んだ露出では明るすぎたり暗すぎたりする場合、露出補正を使って調整しましょう。
セッティングやライティング、カメラの設定が決まったら、カメラのファインダーや液晶モニターで写りを確認します。余計なものが写り込んでいないか、カメラの位置や光の当たり方が適切かをチェックしましょう。
カメラのシャッターを押したら、撮影した画像を再生し、ピントが合っているか、絞りや露出は適正かを確認します。イメージに近づけるために、セッティングやライティング、カメラの設定などを変えて撮影を繰り返しましょう。
撮影後に写真の明るさや色味などを調整する作業を「レタッチ」と呼びます。レタッチによって、写真を理想の仕上がりに近づけることが可能です。ただし、ブレている写真やピントが合っていない写真、露出過剰で白飛びしている写真は、レタッチでも修正できない点に注意してください。
レタッチには専用ソフトが必要ですが、無料で利用できるものもあります。まずは無料で試し、写真の枚数が増えて作業を効率化したいときや、仕上がりの品質を安定させたいときに、有料ソフトの導入を検討するとよいでしょう。
レタッチでは、明るさや色かぶりを整える作業と、商品の品質を実際よりよく見せる加工を分けて考えます。色、量、具材が実物と異なる状態にならないようにします。
食品の魅力を写真で伝えるためには、見せ方の工夫も欠かせません。ここでは、食品撮影ならではの見せ方のコツを紹介します。
食品を撮影する際は、訴求したいイメージに合わせてカメラのアングルを変えてみましょう。人がいすに座って食べるときに近い、斜め45度の角度から撮影すると、料理がおいしそうに見えるとされています。イメージ写真として、テーブルの上に並べられた料理を撮影する際に向いているアングルです。
食品を真上から撮影すると、かわいい印象に仕上がります。小ぶりのお菓子を数個並べて真上から撮影すると、商品のかわいらしさが伝わる写真になります。食品の断面を見せたいときや、ボリューム感を強調したいときは、真横から撮影するとよいでしょう。
原材料やお菓子のフィリングなど、外側からは見えない要素をアピールしたいときは、商品から少し離れた位置に要素を連想させるものを置いてみましょう。たとえば、パイ菓子の横にりんごを置くと、お菓子にりんごが使われていることを自然に伝えられます。
食品を箸で持ち上げたり、スプーンですくったりしている写真、いわゆる「箸上げ」写真は、食べるイメージが想起されて「おいしそう」と感じやすくなります。ソースをかける、はちみつをたらすなど、食べるイメージをかき立てる演出を考えてみましょう。
食品ごとの撮り方を考える場合も、基本は光と角度の調整です。肉の場合は実物と写真を見比べ、色と表面の質感が伝わるようにします。生肉の商品写真と調理後の利用イメージは分け、販売する商品との関係を説明します。
既存の和菓子の演出に加え、焼き菓子では表面の凹凸、ケーキでは高さや層など、伝えたい特徴を決めます。真上・斜め・横から撮り比べ、断面写真も必要に応じて用意します。
瓶や袋は照明を反射しやすいため、光やカメラの位置を変え、ラベルが読めるかを確認します。中身を器に出した写真も併用できます。盛り付け量が販売単位と異なる場合は、使用イメージであることを説明します。
反射しやすい包装、複数商品の統一撮影、調理やスタイリングが必要な撮影では、専門家への依頼も選択肢になります。見積もりは撮影点数、調理、スタイリング、出張、納品形式、写真の使用範囲をそろえて比較します。
用途によっては対応できます。まず光、固定、ピント、背景を整えます。大判印刷や細かな質感が必要な場合は、求める品質を確認して機材や依頼先を選びます。
光の向きと撮影角度を変え、同じ食品を撮り比べます。既存のアングルの説明を参考に、主役以外の小物を減らし、伝えたい特徴が見えるか確認します。
商品撮影は、特別な機材や高度な技術がなくても問題ありません。撮影の目的や伝えたいイメージを整理し、アングルや光、背景などのポイントをひとつずつ押さえれば、商品の魅力が伝わる写真を撮影できます。
とくに食品を撮影する際は、食品ならではの見せ方や工夫を取り入れることで、消費者の「おいしそう」という気持ちを引き出しやすくなります。撮影を繰り返して試行錯誤し、自社商品の価値が伝わる写真を目指していきましょう。
撮影した写真は、商品ページや商品提案書で同じ強みが伝わるように使います。情報のまとめ方は「食品の商品提案書の作り方」の記事も参考にしてみてください。
参考:
やまぐち千予著「売り上げがアップする商品写真の教科書」玄光社、2017年
長谷川修著「これからはじめる商品撮影の教科書 改訂2版」技術評論社、2018年
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