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【後編】突破力と真摯な想い!”アカモク”常食を目指す開拓者 高橋清隆

想いのバトン

【後編】突破力と真摯な想い!”アカモク”常食を目指す開拓者 高橋清隆

メーカーインタビュー
岩手アカモク生産協同組合 高橋清隆 様
引き続き岩手県の「岩手アカモク生産協同組合」の代表である高橋様のインタビューです。
後編では、特に首都圏ではほぼ知られていなかった「アカモク」を売っていくために、どのような戦略を立てて、取り組まれたのか、また今後の目標などについてもお聞きしました。
☆岩手アカモク生産協同組合インタビューの【前篇】はこちら
アカモクを“常食”とするための「PR戦略」と「レシピ開発」

ーー初期のご苦労された時に、”認知度向上”やアカモクの売込みの取り組みは、どのようなことをしていたのですか?

儲かっていない組合でしたから、アポイント取って東京へ行って営業回りなどはほぼしませんでした。
ただ、メディアとか雑誌などに載っているこだわりがありそうなお店の情報などを仕入れて、そこに直接お電話とかメールで連絡をしました。その中でリアクションがあったところにサンプルを送る、といったアプローチをしていました。

ーーそうやって、少しずつ広げていったという事ですね。
メディアとかを活用する、といったことはされていましたか?

そこはやっていました。CMは作れませんから、PR戦略を常に意識していました。特にプレスリリースを出さなくても、マスメディアの方から来てくれました。アカモクの話題性や優位性などについて面白いストーリーだと感じていたそうです。私の心情は必死なんですけどね。

ーーアカモクの持つ栄養分やその数値データを提出する必要がありますね。

そういったエビデンスをつくる部分は食品とは関係なく進めていました。もちろん大学の先生などもご紹介出来て、一緒に番組制作などにも登場して貰えるようなコネクションを得ていましたので、テレビ局とか新聞の方が取材し易くするという体制も整えてありました。

ーーそのあたりは高橋さんが考えた戦略だったのですね。

考えたというか、取材相手から「こういう企画なんですが」という依頼が来て、私の方が全部コネクションを作って、私が取材の窓口として一人でやっていました。それを何回かやっているうちに、場数を踏んでノウハウのようなものが出来て、先方のメディアのご要望などになんとなくお答えできるようになりました。

ーーあと、HP上でも「レシピ紹介」してらっしゃいますが、管理栄養士さんともタッグを組まれてらっしゃいますよね。

何がお客様に響くのか?という点では、素材そのものよりは、やはり美味しくなければ次の購入にも繋がらないと思います。
その食品に”食文化”があれば「定番の食べ方」というのがあって、メーカーが何も言わなくても皆さんが美味しい食べ方で食べてくれますが、”アカモク”はその土壌が出来上がっていません。メーカー側が発信して「こういう食べ方ですよ」という紹介する必要があります。そのためにレシピ紹介に取り組んでいるんです。
今現在はニッチな食材ではありますが、そのうちメジャー級に持っていこうと思っています。
そのためにやっぱりおいしい食べ方っていうのを、広報していきませんと拡がりませんよね。

ーー見たことのない食品は、まず「どうやって食べるんだろう」って思いますものね。

はい。人間、知らないものはやはり食べません。
これが”観光”とか”旅”といった「別のシーン」になると、1回は試すのですけど、普段の「日常的」な場面では、知らないものは本当食べないんです。

ーーその「日常的」に手に取って頂く、というのが目標なのですね?

はい。アカモクの課題は、まだ”常食”になってないという事なのです。
この20年間かけても、未だに”定番”の食材になっていないんです。創業からずーっと目指してきたところである、”常食”になるためには、やはりおいしい食べ方というものが確立されていないといけないので、メーカーとして「レシピ開発」の発信に取り組んでいるという事なんです。
”栄養”に関する部分で言うと、アカモクは他の海藻と比べるとポイントが高いんですよ。だから料理研究家の方のお名前を使うというよりも、やはり”管理栄養士から”、という形の方がハマるのではないかと思ったのです。

ーーなるほど。なにかすべて高橋さんの描かれている戦略が素晴らしいですね。

まあ、それは管理栄養士を育てている学校の先生が、偶然アカモクについて取り組んでいたものですから、そういった繋がりもあり人と人を巻き込んできました。
まず第1段階として先ほど話した通り、本当に人は知らないものは全く食べないので、「知ってもらうことの土壌づくり」が最初なんじゃないかなと。大手メーカーさんの様にCM打つことも出来ない売上高でしたし。

ーーそういったところでは、別の地区の競合他社さんとの連携の取り組みもされていますよね。

うちの商品が流れていないところも、他社商品で全国に拡がれば、という所を目指していました。

ーー自治体との連携もされていますよね。

いろんな所からアカモクの講習会とかと視察にも来て頂いたり、なるべく情報公開をしてきました。それはアカモクが拡がるための一つの切り口として取り組んだものです。
自社で言うと、ある程度実績が得られてきて来たら行政の対応も変わってきました。自治体が絡んでくると、大きな取引などで「県が応援しているから」と、その公的なパワーとか信頼度とかを得ることが出来ますね。

ーーいろいろご苦労されたけど踏ん張ったことで、そういったステップ、アップが出来てきている、という事ですね。



~【管理栄養士さんおすすめレシピ紹介】~

《 アカモクの白和え 》 

作成者:新渡戸文化短期大学生活学科准教授 荒木葉子
アカモクの白和え
アカモクの白和え
材料(2人分)
アカモク…40g
にんじん…40g
木綿豆腐…80g
いりごま(白)…80g
砂糖…8g
しょうゆ…6g
みそ…4g
作り方
1. にんじんは3cm長さの短冊切りにし、柔らかくなるまでゆでる。
2. 豆腐はゆでて水気を絞り、こし器でこす。
3. すり鉢でごまをペースト状になるまですり、3でこした豆腐、砂糖、しょうゆ、みそを加えて混
ぜ合わせる。
4. アカモクとにんじんを4で和える。鍋に油を熱してたまねぎ、ベーコン、米の順に加え透き通る
まで炒めたら、トマトも加えてさらに炒める

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お客様の声を反映するのは当然。製品にシャキシャキ感をプラス。


ーーそれでは、次に、そういったところで販売に取り組まれているなかで、消費者の方の反応や、お声といったものでは、どのようなものがありましたか?

まず当初多く聞かれた声としては、「初めて聞いたし、知らなかったけども、食べれば美味い!」という物がありました。「見た目と違って美味しいよね」とか、そういったお声を聞いています。あと「ネバネバ好きの方には堪らない」食材らしいです。
機能的な面では、やはり50代、60代の方とかで男女問わず身体のことを気にし始めている方々から「継続して食べ続けたら、体質が変わった」という声をよく聞くようになりましたね。


ーー糖尿病などの生活習慣病みたいなものに対して、”効果がある”、とは言ってはいけないのかも知れないのですが、ちょっと気を付けている方には”向いている”、といった感じでしょうか。

もちろん、「数値が安定した、数値が下がった」という話も本当に良く聞こえてきます。そういった血糖値だとかの話の他に、最近になって良く聞くのは「花粉症が治まった」という話ですね。


ーー花粉症ですか? それは私も興味深いですね!

ただ、まだまだアカモクはどこでも売っているわけではないので、「どこどこのスーパーで売って欲しい」といったお声も多いですし、そこはうちの営業努力の不足かなと思っています。都内でも、ピンポイントでしか商品が流れていないので。


ーーネバネバだけどシャキシャキという食感については、珍しいと思いますが、そのあたりについての反応はどうだったのですか?

創業当時の話ですが、2009年7年ぐらいから商圏エリアを首都圏に切り替えてアプローチし始めたとき、当初は先ほどの話のように、アカモクを食べていた秋田の製品のような食感に近づけて作っていたのです。


ーー秋田の製品の食感というのは?

シャキシャキ感が無くて、山芋を摺り潰したようなものでした。アカモクは細かくすればするほど、その粘りのテクスチャーは強くなる特徴があるのですが、それを首都圏の方に提案したら、お客様の声から「噛みたい」と言われたんです。


ーーなるほど、噛みたい、ですか。

本能なんでしょうね。そのお声を聞いて、シャキシャキ感を残す現在のカット方法に切り替えたんです。マーケットを首都圏に決めていましたから、首都圏の方が「美味しい」と感じるのであれば、路線を切り替えるのは当然という考えでした。




ネバネバなのに、シャキシャキ
ネバネバなのに、シャキシャキ

またもや、コロナ禍という障害が・・・。
複数の販売チャネルで乗り切る。


ーー最近の話に移りますが、ここのところのコロナ禍の影響はどのようなものですか?

まず困っていることは、やはり飲食店などの外食業界の得意先からの注文は全く消えました。ゼロになりました。


ーーゼロですか。

はい。そこはもう1回仕切り直しかな?と思っています。「定番品」ではなかったので、回復すれば注文が入ってくるものではないんです。もう1回、一からやらなきゃダメだなというのはちょっと思っているところです。


ーー都内の飲食店はひどい状況です。ちょっと可哀そうなくらいです。そこに卸されているメーカーさんは本当に大変ですよね。

はい。ただ、うちは売上構成比でいうと、スーパーマーケットと飲食店では半分半分ぐらいなんだったんです。この1年間に関しては、スーパーマーケットの方は閉まることはなかったので、そちらでカバー出来たのです。ただ「コロナ特需」は全く無かったですが・・・。
もう1つサプリメントの方の売上もあったものですから、この1年は乗り切れました。年商で言うと前年比トントンになりました。


ーーそうですか。打撃を受けたメーカーさんも多くある中、素晴らしいですね。

そこはやはり販売チャンネルの売り上げ構成比のバランスが大きかったですね。
この1年間もうひとつ困ったのは、オンラインで話は出来ても、やはり商談の成約がなかなか難しかった事です。スーパーマーケットだと「新商品は要らない」とか、地域の物ではなく「定番品で充分だ」とか言われますね。
コロナ禍では、新規営業出かけることも出来ず、まず毎日毎月注文が来るかな?来ないかな?というようなヤキモキするような時間を過ごしてきました。
“健康”と“SDGs”がキーワードに。


ーー将来高橋様が取り組んでいかれることとして、思い描いていることはどういったものがありますか?

まずは「アカモクを常食の定番メニューにすること」これを一つのゴールにしています。社会的なシーンとして、常に食べられて、常にお店に置いてある商品である、という事です。
それとプラスして、今は”健康”というキーワードは“食”と直結していて切り離せない時流になっています。ここは引き続き”機能性”についてのポテンシャルも探り続けていきます。
また、現在水面下で取組みを進めていることがあります。私の方から発信することは無いのですが、研究機関からアドバルーンを上げてもらうような形で、社会的にアカモクについて注目を持ってもらう仕掛けを、準備が出来次第取り掛かろうと思っています。
PR戦略として、またどこかのテレビ局の番組企画の中で取り上げてもらうことで、世間のお客様に届けばと思っています。そのためにはこちらの方でエビデンスの確証をしっかり得ていくという必要があります。
また近年、社会的に取り組むべき課題として「SDGs」があり、我々メーカーもそのワードを耳にするようになりました。これから商品を作っていくうえで必要な取り組みとして位置づけられていくと考えています。
組合では創業当初からアカモクの資源保全管理に取り組んできました。
秋田県での枯渇事例を教訓にして、岩手県では毎年同じ量を収穫できる海洋環境づくりを漁師さんと一緒に時間をかけて実現してきました。漁師さんと、アカモクを一気に獲ることなく、ブレーキをかけることで、来年も同じ収入を得ていこうというビジョンを共有しています。
この環境を維持し、事業ベースの収穫できる環境と生産体制を両立しているのです。そのため東日本大震災大津波被害以外はアカモクが枯渇したことはありません。
これからも資源保全管理をマネジメントしていきます。今流行りの言葉で表すならサステナブルシーフード・アカモクでしょうか。




漁師さんと取り組むSDGs
養殖牡蠣棚と一緒に育つアカモクは、ここ山田湾の特徴です。海洋多様性の観点から言えば、アカモクは「海のゆりかご」と呼称されており、プランクトンや小魚の住み家となっています。また光合成をして成長しますからCO2を吸収し酸素を生成して豊かな海の形成を担っているのです。
私たちは、海洋環境をマネジメントしている浜から収穫された原料で加工した商品をお客様へ提供していきます。これまで通りに。
目指すのは“アカモクのリーディングカンパニー”。
あとは、会社の目標としては「アカモクのリーディングカンパニー」になろうと思ってます。
食とは違う商品、機能性の部分に関わるカテゴリの商品です。サプリメントや、残渣でお米も作られるなどの農業方面にも関わり始めています。また今度化粧品も発売予定です。


ーー化粧品ですか?いろいろと計画が目白押しですね。楽しみです!
インタビューは以上です。ご多忙のところ貴重なお時間をいただきありがとうございました!


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今回のインタビューで、髙橋様がいろいろな難題に怯むことなく、工夫と努力で立ち向かって乗り越えることが出来ているのは、髙橋様自身の「アカモク」に対する真摯な想いから来るものだと感じました。
アカモクに対する”想い”の強さが、計画的なPR戦略や機能性の裏付け検証などを成功させるパワーの源泉となっていると思います。
全国のスーパーマーケットなどで、手軽にアカモクを購入できる日が来ることを私も願っています。
バイヤーズキッチンではこのような地方食品メーカー様やバイヤー様に参考にしていただけるようなコンテンツを、今後も取材・掲載してまいります。(スタッフ 山崎)

 

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