想いのバトン
はい。ただ、代々わかめ問屋だったわけではなく、もともと私の親父が別の仕事をしていた時に、わかめ問屋をやっていた別の創業者の方にお声をかけてもらって、暖簾とお客様を貰って営んでいた、という形でした。
私はサラリーマンだったのですが、実家に戻ってそのわかめ問屋を手伝おうかなと思っていた時に、アカモクに出会って、今に至ります。
わかめの取り扱う問屋事業がどんどん厳しくなってきていたんです。地元の業者が直接量販店さんと繋がって問屋飛ばしのような動きが出て来たりとか、大手スーパーさんがPB商品のはしりのような感じで漁協さんと繋がったり、あとは中国産から安い商品がドーンと入って来たりしたんです。
そういった状況の中で何か新しいことを始めないといけないと、うちの親父がアンテナ張っている時にアカモクに出会ったのです。ちょうど私がサラリーマンを辞めたタイミングでした。
アカモクは、もうずっと「食べるもんじゃない」、「食べられるの?」っていう認識でした。
先ほど申し上げたように、私の親父がアンテナ張っていた時に、秋田ナンバーのトラックが毎日のようにアカモクを山積みにして持って行くのを見かけて、あれは何をするのだろうな?と思っていたんです。
最初は肥料とか家畜のエサに使うのかなって思っていたのですけど、追いかけて調べてみたら、人が食べるものだということが分かったんです。アカモクは秋田の方では江戸時代からずっと食べられていたソウルフード的な海藻食材でしたが、原料が枯渇して探していたらしいのです。それをうちの親父が目に留めた、という巡り合わせだったのです。
そのアカモクのポテンシャルについては、親父はその時にピンと来たようです。
そこから、ほぼ事業計画とかマーケティングとか、うんぬんかんぬん関係なく、勢いで取り掛りました。
いえ、それはもっと後の話です。
はい。親父と一緒に立ち上げたこの会社では、「わかめ」や「めかぶ」の知見はあったので、アカモクも同じ海藻類だということで、「まあ、やれなくはないだろう」ということで、本当に勢いだけで始めたんです。
ところが、アカモクそのものが全く「わかめ」や「めかぶ」と違う海藻の特性があったのと、アカモクを食べるという食経験・食文化が岩手県には無かったので、最初から売れるものでもなかったんです。そのため、当初2年間ぐらいは研究に時間を費やしてしまって、それからやっと営業を始めたのが3年目なんです。そこまでの売り上げは本当に微々たるもので、ほぼ無いようなものでした。
3年目になってようやく営業活動をして行く中で、まず県の方に話をしてみたんですけども、相手にされず・・・。それが十年間続きました。アカモクそのものだけの商品なので、手を変え品を変えという事も出来ませんでした。
ただそれは販路の話で、それとは別に同時進行で大学の方とアカモクの機能性について研究を進めていたんです。
事業は赤字で約10年間さっぱり売れず事業としては全く成功していない状況でした。
”もずくブーム”や、”めかぶブーム”もあって、スーパーマーケットにも相手にされませんでした‥‥。
”健康ブーム”というのが背景にあったんですけども、肉・魚であれば知らない魚でもヒットするケースは良くあったんですが、メインを張れない副菜の食材・脇役の食材は、「今、めかぶが売れてるから、いいや」とか「もずくが売れているから」と言われたり、ましてや知られていない食材なので、売場の棚取りも難しく、置いてもすぐ棚から撤去されました。
2009年から一気に販売戦略を切り替えました。
ちょうどそのぐらいから、”こだわり”とか”差別化”とかが言われ始めた背景もあって、首都圏の反応が良くなったんです。商売はニーズがある所に合わせる、というのが基本ですので、主に首都圏の飲食店の方にチャネルを合わせました。それらの得意先とやり取りしているうちに実績も出来て、ちょっと上向きになって、ようやく事業として軌道に乗りはじめたんです。
”こだわり”をコンセプトにしている料理人の方たちとキャッチボールのようにやり取りしているうちに「こうやって食べると美味いよ」みたいなフィードバックを貰う事も出来て、それを次の営業する際にトークとして使わせてもらいました。そうやって新規開拓も出来始めた感じですね。
はい、そうです。また、その頃から色々な所でマスメディアの方にも取り上げられるようになってきて、徐々に知名度が上がってきたんです。そこへ機能性成分の研究成果や栄養分の優位性といったものも出てきて合わせて軌道に乗ったという感じです。
宮古工場は無事に生き残ったのですが、組合本社は本当にきれいさっぱり持っていかれました・・・。
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